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糖尿病網膜症に対する抗VEGF療法の位置づけは?

No.4998 (2020年02月08日発行) P.48

大石明生 (京都大学大学院医学研究科眼科学教室)

植村明嘉 (名古屋市立大学大学院医学研究科網膜血管生物学寄附講座教授)

登録日: 2020-02-06

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  • 抗血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)療法が糖尿病黄斑浮腫に対して有効であることは言うまでもありませんが,近年,糖尿病網膜症の進行抑制にも従来の汎網膜光凝固と同等の効果があり,視力はむしろ良好ということが報告されています。今のところわが国では保険適用はありませんが,今後広まっていくのでしょうか。また,ほかに開発段階で有望な治療などはあるのでしょうか。名古屋市立大学・植村明嘉先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    大石明生 京都大学大学院医学研究科眼科学教室


    【回答】

    【網膜症自体に対するわが国での適応は困難。Ang2阻害との相乗効果に期待】

    米国では黄斑浮腫の有無にかかわらず,糖尿病網膜症に対する抗VEGF療法が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)により承認されています。一方,わが国では糖尿病黄斑浮腫や加齢黄斑変性などに対する抗VEGF療法の薬剤費が,眼科医療費全体の約1割に達しており,糖尿病網膜症自体への適応拡大は困難ではないかと考えられます。

    わが国における糖尿病黄斑浮腫の治療では,ステロイド(トリアムシノロンアセトニド)の硝子体内またはテノン囊下投与も承認されています。さらに欧米では,フルオシノロンアセトニドやデキサメタゾンの硝子体内インプラント製剤も用いられています。これらのステロイド療法では,抗VEGF療法に比べて長期間の治療効果が期待できる反面,眼圧上昇や白内障などの副作用が懸念されます。しかし抗VEGF療法抵抗性の糖尿病黄斑浮腫でも,ステロイド療法により治療効果が得られることがありますので,副作用を低減した抗炎症薬の開発が待望されています。

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