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【識者の眼】「産業医のための新型コロナウイルス関連肺炎対策(2020年1月22日現在)」和田耕冶

No.4997 (2020年02月01日発行) P.54

和田耕冶 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-01-22

最終更新日: 2020-01-22

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新型コロナウイルスのヒトからヒトへの感染が確認されました。2020年1月22日現在の情報を基に、企業ではどうした対応が今後求められるのかについて産業医向けに解説をします。なお、今後の展開により、早期に状況が変わり得ることをご承知おきください。

私は2019年1月に武漢を訪問した経験があります。武漢は地下鉄が9路線もある大都市で、東京や大阪への直行便もあります。今後も、国内外で感染例が確認されるでしょう。

こうした状況に備えて企業にはいくつかの意思決定が必要になり、そこには産業医の支援が求められます。

(1)国内事業がメインの企業

従来のインフルエンザ対策と同様に、①発熱など具合の悪い従業員は休ませる、②手洗い、③不特定多数が多い場所ではマスクの着用─が対策として挙げられます。接客業ではマスク着用を禁止する動きもあるようですが、国内での感染などがさらに確認され、不特定多数と業務で接触するような場合には、一時的にはマスク着用を許可することも良いでしょう。ただし、マスクの効果を過信してはいけません。

(2)海外に出張者や駐在員がいる企業

特に中国にいる場合にはなかなか難しい対応が求められます。春節ということもあり、多くの日本人の駐在員や出張者は帰国しています。春節が終わり、また中国へ行くとなると、本人も家族も不安になることもあるでしょう。

現地に工場があって従業員がいるとなると、春節明けは発熱者の確認なども必要になるでしょう。春節の間に中国や世界で感染が拡大した場合に、従業員が少しでも安心できるような対策の選択肢を検討する必要があります。

現段階では、感染性も重症度も不明なことが多いです。新型インフルエンザのように、パンデミックのような形で世界に広がりうるのかはまだわかりません。重症度も、従来のインフルエンザと比較してどのくらいかによって深刻度は変わるでしょう。もう少し症例が集まるとわかるでしょうが、海外の情報だけでは十分ではありません。

2009年のインフルエンザの流行のように、初期の感染者は企業名などが出ることがあります。メディアやネットなどの勢いをコントロールすることは難しいです。感染症だけでなく、風評被害なども考慮する必要があります。経済への影響、そして来たるべきオリンピックへの影響は最小限になればと願います。また状況をみて、更新します。

【参考文献】

▶    和田耕治, 他:新型インフルエンザ発生時に企業に必要な感染対策に関する意思決定とそのための情報. 産業衛生学雑誌. 2012;54:77.
 [https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/2/54_wadai11005/_article/-char/ja/]

和田耕冶(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス]

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