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【識者の眼】「間違った知識が一般人に流布していくリスクが極めて高い状況」倉原 優

No.4995 (2020年01月18日発行) P.58

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2020-01-15

最終更新日: 2020-01-14

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2019年末に「血液クレンジング療法」がTwitterを賑わせた。とある芸能人が、この治療法を受けているということが話題になったためだ。血液クレンジング療法とは、100〜200mLの血液を採取し、体外でオゾンガスと混合して、再度血液を戻すというものである。国内では、保険適用のない自由診療として、美容・アンチエイジングの分野でしばしば用いられている。この血液クレンジング療法、あまり耳にしない医学雑誌に臨床試験が掲載されているのは知っているが、少なくとも美容・アンチエイジングに対する効果は証明されていない。一部の美容系クリニックの金儲けになっているのが現状と思われる。

SNSは、こうしたニセ医学の拡散が速い。SNS上ではすかさず医師から修正が入るものの、リツイートの数の力に圧倒され、あっという間に情報が拡散されてしまい、間違った知識が一般人に流布していくリスクが極めて高い状況にある。

たとえば、小児ではインフルエンザの発熱を抑えるためにはアセトアミノフェンが用いられることが一般的だが、SNSではそれが曲解されて、成人を含めた全員にNSAIDsは禁忌であるという間違った情報が広まっている。そのため、整形外科疾患に対してNSAIDsを用いている高齢者がインフルエンザになったとき、NSAIDsをやめるべきだという議論すらある。皆、その背景にあるインフルエンザ脳症やReye症候群の議論には踏み込まず、ただただ危険性があるという情報のみが拡散されていった。しまいには、近くのクリニックでNSAIDsを処方された、医療ミスだと騒ぐ人も出てきた。こうした軽微な誤情報は、SNS上のいたるところで散発的に噴火している。

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS][血液クレンジング療法][ニセ医学]

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