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皮弁の虚血再灌流障害に対する基礎研究の進歩

No.4990 (2019年12月14日発行) P.57

津田達也 (徳島大学形成外科・美容外科)

橋本一郎 (徳島大学形成外科・美容外科教授)

登録日: 2019-12-16

最終更新日: 2019-12-10

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【アポトーシス抑制と幹細胞や成長因子の投与は皮弁壊死を救済するか】

皮弁移植手術は組織欠損を充塡するために必須の手技であり,皮弁に壊死が生じると重篤な合併症を引き起こすことがある。皮弁壊死の原因として,虚血再灌流障害(ischemia reperfusion injury:IRI)が注目されている。IRIとは,一定時間虚血に晒された組織に酸素が供給された際に活性酸素種が過剰に産生され,酸化ストレスにより組織障害が引き起こされる病態のことである。IRIによる皮弁壊死を抑制する目的で,炎症の抑制や抗酸化薬の投与について研究が進められてきた。

しかし,現在でもIRIによる皮弁壊死を十分に抑制することは難しく,近年は新たなアプローチによる研究が進められている。1つはアポトーシスの抑制である。酸化ストレスにより引き起こされるアポトーシスに関連したシグナル経路の解明が進められており1),アポトーシス抑制が皮弁壊死に及ぼす影響について研究が発展している。もう1つは幹細胞や成長因子の投与である。幹細胞移植による血管新生促進が,皮弁虚血性壊死に抑制効果をもたらすことが報告されている2)

幹細胞移植は虚血再灌流モデルにおいても壊死抑制効果があることがわかっており,その作用機序の解明が進められている。これら従来の作用とは異なる治療法の研究により,皮弁移植手術の安全性のさらなる向上が期待されている。

【文献】

1) Jin Q, et al:Mol Med Rep. 2017;16(2):1472-8.

2) Tang YH, et al:Pathophysiology. 2016;23(3): 221-8.

【解説】

津田達也,橋本一郎  徳島大学形成外科・美容外科 *教授

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