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重症虚血肢における下肢救済に対する取り組み

No.4984 (2019年11月02日発行) P.48

吉本 聖 (徳島大学形成外科・美容外科)

橋本一郎 (徳島大学形成外科・美容外科教授)

登録日: 2019-11-02

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【創傷治癒や血行再建における技術・デバイスの進歩による救肢率の向上】

近年,糖尿病罹患率の上昇に伴い,下肢動脈の閉塞病変に起因する足部の安静時疼痛や潰瘍・壊死をきたす重症虚血肢(CLI)症例が急増している。CLI治療の目的は,疼痛の軽減,組織欠損部位の治癒,生命予後の改善であり,QOLの改善が最終的なものになる。このため,救命を優先する場合などの一定の条件を除いて,下肢長を可能な限り長く温存する必要がある。

CLI症例の治療方針は,創の深さ,虚血,感染を総合的に評価・検討して決定する必要がある。足関節上腕血圧比(ABI)や皮膚灌流圧測定(SPP),超音波検査,CT血管造影法,臨床所見などから下肢血行動態を評価し,必要があれば創傷治療に先駆けて血行再建を行う1)。創傷治療では,創面の肉芽形成を促進する陰圧閉鎖療法の開発,さらには洗浄能を付加した持続洗浄陰圧閉鎖療法が開発され,感染の残存が疑われる場合や,壊死組織の一期的全切除が困難な症例に対する治療が大きく進歩した2)。治療期間の短縮や患者の苦痛の減少など,その恩恵は大きい。血行再建においても,血管内治療用デバイスの進歩やヘパリンコート人工血管が報告されている。従来,切断を余儀なくされてきた病態であっても救肢可能なケースが増えてきており,臨床医家各位への周知が望まれる。

【文献】

1) Miyata T, et al:Guidelines for the management of peripheral arterial occlusive diseases(JCS 2015). p31-43.

2) Kiyokawa K, et al:Plast Reconstr Surg. 2007; 120(5):1257-65.

【解説】

吉本 聖,橋本一郎  徳島大学形成外科・美容外科 *教授

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