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高安動脈炎に対するトシリズマブ加療中の治療効果判定の方法は?

No.4982 (2019年10月19日発行) P.57

三浦瑶子 (昭和大学病院リウマチ膠原病内科)

吉藤 元 (京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学講師)

登録日: 2019-10-17

最終更新日: 2019-10-15

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  • 高安動脈炎に対するトシリズマブ加療中の治療効果判定についてご教示下さい。
    自覚症状,血圧や血管雑音といった身体所見,ポジトロン断層法(positron emission tomography:PET)-CTなどでフォローをしていますが,自覚症状や身体所見が出る前に確認できる検査上の変化や,早期に再燃を見つける工夫など,京都大学・吉藤 元先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    三浦瑶子 昭和大学病院リウマチ膠原病内科


    【回答】

    【トシリズマブ開始後6~12カ月の画像検査が有用】

    高安動脈炎では,肉芽腫性病変により動脈の中膜が破壊され,動脈のリモデリングが起こり,内腔の拡張や狭窄をきたし,後遺症につながる1)ため,病変のフォローアップが課題です。ご質問は,トシリズマブ(TCZ)が炎症マーカーを抑制しmaskする状況で,自覚症状や身体所見が出る前に,効果不十分や増悪を察知しうるかということだと存じます。

    表1に,TCZ投与後に動脈病変の進行を認めた5例の報告2)~5)をまとめました。出現した病変は,3例で大動脈分枝の狭窄,2例で大動脈の拡張・狭窄,1例で大動脈壁の穿通性潰瘍でした。大動脈壁の穿通性潰瘍は高安動脈炎の一般的な合併症ではありませんが,TCZ特有の合併症である可能性はあります。

    発見のきっかけは,2例で自覚症状(疼痛,虚血症状),1例で聴診所見,1例で血液検査(貧血,炎症マーカー),1例で画像検査でした。5例中4例で,自覚症状や身体所見が現れてから画像検査を行い,病変の進行を認めました。早期発見のためには,無症候期の画像検査が有用と考えられます。そのタイミングは,表1の全例において画像異常を認めたのがTCZ開始後12~18カ月に収まりますので,それよりも早い6~12カ月が妥当と考えられます。とりあえずは,6カ月後に大動脈と主要分枝の画像スクリーニングを行うことを提案します。

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