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高齢者のポリファーマシー対策

No.4978 (2019年09月21日発行) P.51

岩切理歌 (東京都健康長寿医療センター総合内科部長)

登録日: 2019-09-19

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【生活機能に応じた処方の見直しが必要】

ポリファーマシーとは,臨床的に必要とされる以上に薬が処方されており,薬物有害事象の増加,服薬過誤などの問題につながる状態のことを指す。持病が増えるにつれ,服薬数が増加する一方で,加齢による生理機能低下により薬剤有害事象出現リスクが上がる。特に6剤以上の内服において有害事象が出やすくなることが報告されている1)。また,服薬数が増えると残薬が増加し,薬の飲み間違いが増える傾向にある。さらに,残薬の年間総額は約百億円から数千憶円とも言われている2)

対策としては,①処方数を減らす:エビデンスがはっきりしない薬剤は減薬を検討。新規に処方する場合は,中止や継続を決定する時期を決めておく,②有害事象の回避3):転倒,ふらつき,物忘れ,せん妄,うつ,食欲低下,便秘,排尿障害などの症状が,薬の効きすぎや薬剤性老年症候群によるものではないか確認すること(特に抗コリン薬,NSAIDs,α遮断薬,β遮断薬,ベンゾジアゼピン系薬剤に注意が必要),③服薬回数減や一包化の検討,④内服の必要性についての指導強化,などが挙げられる。

また,他科からの処方を確認することは,重複処方を防ぐ上で必要不可欠である。薬物治療方針については,患者や家族と診療所医師,病院医師,薬剤師,看護師などが共有し,連携することが重要である。

【文献】

1) Kojima T, et al:Geriatr Gerontol Int. 2012; 12(4):761-2.

2) 中央社会保険医療協議会総会(第311回). 2015.

3) 日本老年医学会, 編:高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. メジカルビュー社, 2015.

【解説】

岩切理歌 東京都健康長寿医療センター総合内科部長

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