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咽頭結膜熱(プール熱)[私の治療]

No.4971 (2019年08月03日発行) P.52

澤田雅子 (澤田こどもクリニック院長)

登録日: 2019-07-31

最終更新日: 2019-07-30

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  • アデノウイルスによって起こる一般的な感染症である。アデノウイルスには51種類の血清型があり,型により主な症状として咽頭扁桃炎,流行性角結膜炎,胃腸炎などを呈する。主に3型による,発熱,咽頭炎,結膜炎を主症状とする小児の急性アデノウイルス感染症を咽頭結膜熱と呼ぶ。アデノウイルス感染は1年中存在しているが,咽頭結膜熱は気道分泌物や眼脂で汚染された水泳プールの水やタオルの共用で感染するので,プール熱とも呼ばれ夏風邪の印象が強い。

    ▶診断のポイント

    小児においてはどの年齢層でも感染が起こり家族内感染もみられるので,周囲の流行状況は診断に有用である。1日の間に39~40℃の高熱と37~38℃の微熱が上下する状態が4~5日続き,扁桃腺が腫れて咽頭痛,頭痛,腹痛や下痢を伴い,耳介前部および頸部リンパ節が腫脹し,片目または両目の結膜充血や眼脂もみられると,咽頭結膜熱と診断する。咽頭拭い液や結膜拭い液を使用する迅速診断キットがあり,有用である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    特異的治療はなく対症療法につきる。ウイルス感染症なので基本は十分に水分を摂って安静にしているだけで特に治療の必要はない。臨床経過である程度診断がつく場合は治療方針が変わるわけでもないので,集団生活をしていない乳幼児であればなおのこと,迅速診断キットによる検査は必ずしも必要ではない。感染経路は通常飛沫感染や唾液や,眼脂が付着した手指や拭いたものを介しての接触感染なので,予防の基本であるうがいや石鹸による手洗いの励行,拭いたものを感染源にしないためハンカチやタオルでなく,ティッシュなど使い捨てのもので拭いてすぐ捨てる,バスタオルを共用しないなど,周囲への感染を防ぐための隔離も含めた注意と,本人の水分補給と高熱で消耗する体力を維持するための安静に対する指導を行う。

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