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■NEWS 【個別指導・監査の弁護士帯同を】溝部訴訟を教訓に健康保険法改正研究会がシンポジウムを開催

No.4972 (2019年08月10日発行) P.71

登録日: 2019-07-25

最終更新日: 2019-07-25

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保険医の指導・監査・処分の改善を目指す「健康保険法改正研究会」(代表:井上清成弁護士、石川善一弁護士)のシンポジウムが21日、静岡市で開かれ、個別指導・監査において弁護士の帯同を普及させる重要性が確認された。

冒頭挨拶した代表の井上氏は、保険医取消処分の取り消しを求め、2011年に国に勝訴した訴訟(溝部訴訟)について触れ、「(原告は)大変厳しい局面を闘いぬいた。行政訴訟で国を相手に完全に勝った事件は、裁判史上、この一件だけでレアケース」と指摘。その上で、違法・不当な行政処分が出る前の段階で、「行政手続のチェックに弁護士が関与することが必要ではないか」との問題意識を表明した。また、日本弁護士連合会が9月に開催するシンポジウムでも、医療分野の行政手続における弁護士の関与がテーマになっていると紹介し、個別指導・監査における弁護士帯同の普及に向けて意欲を示した。

■溝部訴訟、5年7カ月にわたる闘い

シンポでは、溝部訴訟の原告である小児科医の溝部達子氏(みぞべこどもクリニック院長)と、溝部氏の代理人を務めた石川善一氏が訴訟の経緯を報告した。

それによると、事の発端は2004年、「インフルエンザの診療が異様に多い」ことを理由とする個別指導だった。患者調査の結果、診療は正当に行われていることが判明したが、その後、追及の対象は非対面処方(お薬受診)となり、これが不正請求であるとして監査に至り、保険医取消処分となった。

溝部氏は2005年11月に甲府地裁に保険医取消処分の取り消しと執行停止を求め提訴。06年2月に地裁は執行停止を決定し、10年3月に取消処分を取り消す判決を下したが、国が控訴。11年5月に東京高裁は国の控訴を棄却し、その際、健康保険法の解釈として「処分の際に考慮すべき事情が監査要綱の定める基準に尽きるということはできず、処分理由とされるべき行為の動機をはじめとする諸事情も処分に当たって考慮しなければならない」との見解を提示。同年6月に国が上告を断念し、取消処分の効力が失われた。

■個別指導「犯罪人の取り調べの扱いだった」

溝部氏は個別指導の時の様子について、保険指導医や事務指導官から「こんなに長い時間点滴をしているなんて怪しい」「嘘を言っていますね」などと言われたことを紹介し、「犯罪人の取り調べの扱いで、意見どころか質問すら許されない状態だった」と説明。また、溝部氏は個別指導・監査の際に弁護士を帯同させておらず、処分について審理する「聴聞」時から弁護士を代理人に立てた経験を踏まえ、「指導・監査に弁護士を帯同させることで、現場で患者さんの受療権、医師の診療権を守ってくれたらありがたい」と期待を示した。

石川氏は溝部訴訟の教訓として、①個別指導・監査では録音し、弁護士が立ち会う、②個別指導の時にカルテ等の複写を求められても、(任意なので)承諾しない―などと指摘し、「保険医1人、孤立無援の中では指導・監査の手続の適正が確保されない」と強調。さらに、「訴訟での解決は最後の手段。指導・監査の世界をいかに変えるかが大事で、明治憲法下の大正11年に制定された健康保険法の改正が必要」と述べ、抜本的な対策の必要性を指摘した。

■弁護士帯同による立場や心証の悪化を懸念

このほか、青森県保険医協会事務局の藤林渉氏は、弁護士の帯同について「指導を受ける先生が、関係団体や地域における立場、心証の悪化、国の攻勢を懸念して消極的な場合も多い」と指摘。「帯同は全国的にはまだ壁が高いが、健保法改正、弁護士帯同の権利の確立を保険医協会が軸となってやっていきたい」と話した。

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