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【論点】がん登録データは臨床応用すべきか─住民ベースの医療情報の臨床への活用

No.4946 (2019年02月09日発行) P.24

松田智大 (国立がん研究センターがん対策情報センター がん登録センター全国がん登録室室長)

登録日: 2019-02-06

最終更新日: 2019-02-06

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Aを選びます。患者の個別同意を取得せず,法に基づいて収集しているがん登録データは,法に基づいた利活用が求められています。一見煩雑な利用手続きは,これまでできなかったことが,合法的にできるようになった画期的な進歩と表裏一体であると受け入れなければなりません。網羅性があり,分母が規定できるがん登録データの重要性が十分に理解され,データが有意義かつ合法にがんの予防,早期発見,治療,ケアに活用されることを願います。

1 背景

予防,早期発見,治療,ケア。超高齢社会におけるがん対策のためにはがんの負担とリスクを定量化し,解釈する手段を確保しなければならない。標準化された質の高いがん情報は必要不可欠な武器となる。その最たる例が,がん登録に代表されるpopulation-base database(住民ベース情報)である。

2 がん登録とは

がん登録は,一定地域内の居住者を継続的に調査する前向きコホート研究のひとつと考えることもできる。がん対策の対象となる集団は常に流動的であり,いくつかの医療機関だけでは捕捉しがたい。“コホート研究参加者”である日本人・外国人を含む居住者は,“一定地域”であるわが国への転入から転出までがん罹患のリスクに曝露し,がんに罹患するか死亡や消息不明によって追跡不能になるまでコホート内にとどまると考えることができる。この危険曝露人口たる分母の定義があるために,住民ベースのがん登録データは罹患率の算出に利用することができ,さらに偏りのない生存率の評価が可能となる。がんリスクを群間比較する場合にも,こうした前提は必須である。罹患者のデータベースであるがん登録データからは,選択バイアスを抑えた症例の抽出ができる。1億2000万人のコホートからは,希少がんや小児がんを含めて,十分に安定したがん統計を算出することができる。

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