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不育症・習慣流産

No.4942 (2019年01月12日発行) P.56

山田秀人 (神戸大学産科婦人科教授)

登録日: 2019-01-13

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【原因不明に免疫グロブリンが有効か】

不育症とは,妊娠が成立しない不妊症とは異なり,妊娠しても流産(妊娠22週未満)や死産を繰り返して健康な児を得ることができない疾患群である。2回の流産で反復流産,3回以上流産を繰り返すと習慣流産と診断する。健児がいなければ原発性と呼ぶ。不育症の原因/リスク因子は様々で,頻度は大まかに,抗リン脂質抗体10%,子宮形態異常8%,甲状腺機能異常5%,染色体転座保因5%で,これらは不育症の原因として関与度が高いとされる。これ以外に,凝固第12因子低下(8%),プロテインS低下(7%),プロテインC低下(1%)がリスク因子であると考えられている。約半数の不育症でこれらの原因/リスク因子が見つかるが,残り半数は原因不明とされる。原因不明不育症の中で,黄体機能低下(全体の13%),NK細胞の高活性(11%)や抗ホスファチジルエタノールアミン抗体陽性(10%)が見つかるが,リスク因子としての見解は定まっていない。

通常,原因/リスク因子ごとに,低用量アスピリン,未分画ヘパリン,手術,ホルモン剤,遺伝カウンセリング,テンダーラビングケアなどの治療を行う。しかし,筆者らは1993年,適切な治療を行っても健児が得られない,4回以上流産歴のある治療抵抗性難治性の習慣流産に対して,妊娠初期免疫グロブリン大量療法を世界で初めて行い,これまで69人に実施した1)。染色体異常妊娠を除いた56人中50人(89%)で健児を得ている。現在,保険適用をめざした免疫グロブリン大量療法の二重盲検試験が全国で進行中である。

【文献】

1) Yamada H, et al:ISRN Obstet Gynecol. 2012; 2012:512732.

【解説】

山田秀人 神戸大学産科婦人科教授

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