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外陰部再建方法の進歩

No.4937 (2018年12月08日発行) P.56

橋本一郎 (徳島大学形成外科・美容外科教授)

登録日: 2018-12-09

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【穿通枝皮弁による再建では血行が安定して術後の形態と機能が改善】

外陰部の浸潤癌切除手術では,特に女性において皮弁による再建手術が行われる。その理由として,女性では筋膜が露出しやすく外尿道口や腟前庭部にまで切除範囲が及びやすいことや,周囲組織が少ないことが挙げられる。欠損が大きく骨盤内臓器が摘出されるような症例では,腹直筋皮弁が非常に有用であるが,外陰癌に対する標準的な術式である広汎外陰切除術(radical vulvectomy)では,大腿部からの筋皮弁や筋膜皮弁が使用されてきた。大腿部からの皮弁では,栄養血管が外陰部から離れているため皮弁末梢の血行が不安定なことがある。また,大きな瘢痕が大腿に残ることや,筋皮弁では筋肉と皮弁のボリュームの調整が難しいことも問題になる。

これに対して,骨盤内から肛門部を通って外陰部へ分布する内陰部動脈の皮膚穿通枝を栄養血管とする内陰部動脈穿通枝皮弁(iPAP flap)は,皮弁血行が安定しているほかにも以下のような様々な利点を有する1)2)。皮膚穿通枝を含むように自由に皮弁デザインを行うfree style pedicle flapの概念により,iPAP flapではプロペラ皮弁(gluteal fold flap)やVY皮弁が欠損の形状に応じて挙上できることに加えて,皮弁のボリューム調整も比較的容易である。そのため,術後の外陰を元の形態に近くすることが可能になり,従来の筋皮弁や筋膜皮弁による再建に比べて,機能面での改善がみられるようになった。

【文献】

1) Hashimoto I, et al:Plast Reconstr Surg. 2001; 108(7):1998-2005.

2) Hashimoto I, et al:Plast Reconstr Surg. 2014; 133(4):924-33.

【解説】

橋本一郎 徳島大学形成外科・美容外科教授

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