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陳旧性顔面神経不全麻痺の治療

No.4932 (2018年11月03日発行) P.53

橋川和信 (神戸大学形成外科准教授)

登録日: 2018-11-05

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【様々なアプローチによる各種治療法】

Bell麻痺やHunt症候群,脳卒中などによる顔面神経麻痺の発症から6カ月~1年が経過した後,表情筋の筋力低下や拘縮,病的共同運動などの症状が残ることがある。従来,陳旧期の顔面神経麻痺に対する治療は,完全麻痺を不全麻痺あるいは部分麻痺へと改善させる手術(静的吊り上げ術や筋移植術/筋移行術など)のみとされ,不全麻痺に対する有効な治療はないとされてきた。しかし近年は,関係する診療科ごとに新たな治療法が提案され,日本顔面神経学会などで統合されつつある1)。それらの概要を下記に述べる。

・ 手術治療:従来の術式の変法に加えて,拘縮や異常運動を生じている部位の選択的神経切断術/筋切除術,舌下神経─顔面神経クロスリンク型神経移植術などが行われている。
・ 星状神経節ブロック:頸部にある交感神経節の1つを局所麻酔薬で神経ブロックする。
・ リハビリテーション:鏡を見ながらの表情筋随意運動,表情筋のマッサージなどを持続的に行うことで,表情筋の筋力低下,病的共同運動,拘縮などの症状を軽減させる。
・ ボツリヌス毒素療法:A型ボツリヌス毒素製剤を表情筋に注射することで軽度の顔面神経麻痺を再発させ,その回復過程で新たに適切なリハビリテーションを行う。

これら様々なアプローチによる治療法の組み合わせ方が今後の課題である。

【文献】

1) 日本顔面神経研究会, 編:顔面神経麻痺診療の手引─Bell麻痺とHunt症候群. 2011年版. 金原出版, 2011, p91-107.

【解説】

橋川和信 神戸大学形成外科准教授

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