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光化学オキシダント【世界的に濃度が上昇傾向にあり,健康への影響が懸念される】

No.4918 (2018年07月28日発行) P.57

島 正之 (兵庫医科大学公衆衛生学教授)

登録日: 2018-07-31

最終更新日: 2018-07-24

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光化学オキシダント(Ox)は,大気中の窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)が太陽光に照射されて二次的に生成される酸化性物質の総称であり,その大部分はオゾン(O3)である。いわゆる光化学スモッグの原因となり,眼・咽頭などの粘膜への刺激や気道過敏性の亢進などを引き起こす。

1970年にわが国で初めて光化学スモッグによると思われる健康被害が報告された。その後,70年代は年に数万人の被害の届出があったが,近年は年に数十人にまで減少している。これは全国でOxの常時測定が行われ,高濃度時に光化学スモッグ注意報や警報が発令され,工場の煤煙排出量削減などが実施されるようになった効果であろう。

このように,注意報などが出されるような非常に高い濃度となることは少なくなったが,わが国における近年のOx濃度は増大傾向にあり,全国ほとんどすべての測定局で環境基準が達成されていない。こうした傾向は全世界に共通であり,新興国における前駆物質の排出量増加,気候変動による気温上昇などが原因であると推察されている。

多くの疫学研究では,現状のレベルでもO3が高濃度時には呼吸器疾患による受診や入院,肺機能低下が生じることが報告されている1)。近年は,長期的影響も注目され,O3への長期的な曝露によって世界で年間100万人以上が呼吸器疾患で死亡しているとの推計結果が報告された2)。O3による大気汚染は地球規模の課題であり,国際的な取り組みが求められる。

【文献】

1) Yamazaki S, et al:BMJ Open. 2015;5(4): e005736.

2) Malley CS, et al:Environ Health Perspect. 2017;125(8):087021.

【解説】

島 正之 兵庫医科大学公衆衛生学教授

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