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(3)潰瘍性大腸炎・クローン病に対する腹腔鏡手術の適応と問題点[特集:あの疾患の外科治療─炎症性腸疾患における手術治療の役割]

No.4911 (2018年06月09日発行) P.42

板橋道朗 (東京女子医科大学消化器・一般外科教授)

中尾紗由美 (東京女子医科大学消化器・一般外科)

山本雅一 (東京女子医科大学消化器・一般外科教授/講座主任))

登録日: 2018-06-11

最終更新日: 2018-06-06

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炎症性腸疾患に対する腹腔鏡手術は手術のデメリットを減らしてメリットを最大限に提供できる有用な方法である

クローン病に対する腹腔鏡手術は,回盲部の狭窄病変で初回手術が良い適応であるが,他の病態でも腸管の状況を把握すれば安全に施行可能である

潰瘍性大腸炎に対する腹腔鏡手術は,手技の複雑性からhand-assisted laparoscopic surgery(HALS)やmultiport laparoscopic surgery(MPLS)が施行されているが,reduced port surgery(RPS)やtransanal total mesorectal excision(TaTME)などの新しい手技も導入されつつある

1. 炎症性腸疾患における腹腔鏡手術の現状

大腸癌手術をはじめ,多くの疾患で腹腔鏡手術が急速に普及しており,標準的な手術として定着しつつある。一方で,炎症性腸疾患においては,腸管局所に炎症を伴っていること,患者の全身状態が様々であることなどから,腹腔鏡手術の普及はやや遅れがちであった。

しかし,近年では多くの経験や知見が得られており,標準的なmultiport laparoscopic surgeryに加えてreduced port surgeryなどが行われつつある。患者を限定することで,デメリットを減らしてメリットを最大限に提供できるものである。
本稿では,炎症性腸疾患に対する腹腔鏡手術の現状について当教室のデータおよび文献を交えて,その適応と問題点を解説する。

2. クローン病に対する腹腔鏡手術

大腸癌に対する手術は,がんの根治性と機能温存(排便機能・自律神経温存など)が目的であるのに対して,クローン病の手術では腸管(長)機能温存(消化吸収機能・排便機能など)が主目的となる。クローン病では,①若年から高齢者まで年齢が様々,②栄養状態が不良で痩せている症例が多い,③小児では成長障害を合併することがある,④切除あるいは狭窄形成となる病変部位が複数で残存腸管長の確保が求められる,⑤腸間膜付着側の炎症による血管処理の困難性,⑥周囲の炎症や穿孔,瘻孔,膿瘍の合併,⑦複数回手術症例への対応,などの特殊性を認識する必要がある。

当教室では,2000年以降の腹腔鏡施行率は36.8%(1986~2014年に経験した234例中86例)であるが,しだいにその割合は増加して2011~14年の4年間では63%の症例において腹腔鏡で手術が行われている。しかし,腹腔鏡手術がすべての患者に適応となるものではない。

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