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5年以上経過した診療録は診療継続中でも破棄してよいか?【監督官庁からの確認や医療過誤訴訟に備えて電子データとして保存するのが最適】

登録日: 2017.10.16 最終更新日: 2025.09.20

黒木俊郎 (黒木法律事務所所長/弁護士)

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診療録は保存期間が5年と定められています。診察から5年以上経過した診療録はスペースの都合により破棄しています。たとえば,初診が1989年1月4日の高血圧症の患者を現在も継続して診療している場合,1989年から2012年までの5年以上経過した分の診療録は破棄してよいのでしょうか。すべて保存しなければならないのでしょうか。

(大阪府 Y)


【回答】

「当院では,診療から5年以上経過した診療録は破棄することにしており,初診が1989年1月で現在継続診療中の患者の場合も1989~2012年の5年以上経過した診療録は,順次破棄することになるが,法律上問題はないか」とのご質問です。

医師法第24条第2項は診療録の保存期間を5年間と定めていますが,この5年間の起算点(始期)については医師法に明確な規定がありません。したがって,質問者の病院でやっておられるように,診療時から5年以上経過した診療録を順次破棄しても医師法違反で刑罰を受けることはありません。しかし,刑罰を受けないからまったく問題がないわけではなく,次のような問題があります。

(1)問題1: 保険医療機関および保険医療養担当規則第9条違反

規則第9条は,次のように規定しています。

「保険医療機関は,療養給付の担当に関する帳簿……その他の記録をその完結の日から3年間保存しなければならない。ただし,患者の診療録にあつては,その完結の日から5年間とする」

ご質問の症例は,まだ診療は継続しており,診療完結に該当せず,診療録を順次廃棄すると,規則第9条違反となります。ただし,この規則は法律ではなく,厚生労働省の省令にすぎませんし,医師法違反のような罰則もありませんが,保険医療機関であれば,これを守る義務があります。


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