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白癬菌・ウイルスに熱水による洗濯・消毒用アルコール噴霧は有効か?【熱水消毒は有効,消毒薬への浸漬も有効だが,消毒薬の空中散布は避ける】

登録日: 2017.06.20 最終更新日: 2025.09.20

佐々木拓弥 (岩手医科大学附属病院医療管理部感染症対策室) 浅尾太宏 (岩手医科大学附属病院薬剤部主任薬剤師)

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(1)足白癬患者の靴下・下着の殺菌法について。消毒用アルコールの噴霧後,何分で死滅するのでしょうか。沸騰しているか,80℃くらいの湯をあらかじめバケツに入れておいた衣類にかけて十分に沈めておくと,死滅しているのでしょうか(何℃,何分程度で殺菌が完了するでしょうか)。
(2)アルコール感受性のウイルスに感染した患者が退所した後,空中へ消毒用アルコールをくまなく散布すると,何分くらいで空中に浮遊していたウイルスを排除できますか。

(石川県 S)


【回答】

(1)白癬菌患者の下着・靴下の消毒法
Trichophyton属,Micro­sporum属などの皮膚糸状菌は,表在性真菌症である白癬の原因菌で,小児から高齢者まで幅広い年齢層において頭部,体部,陰股部,手足,爪に白癬菌の感染を引き起こします。また,接触感染により感染伝播の可能性があるため,注意が必要となります。消毒方法に関しては,消毒薬を用いるよりも熱消毒が効果的であることが報告されており1),患者リネンの消毒には熱消毒が最も適しています。

①熱消毒の方法
熱消毒は糸状菌のみならずすべての微生物(芽胞は除く)に対し有効であり,さらに安価で残留による毒性もないため安全性も高い消毒方法です。熱水条件(70~80℃,10~25分間)で行うことが推奨されています。

②消毒薬による方法
熱水洗濯ができない場合には消毒薬(0.1%次亜塩素酸ナトリウムやアルコール)を用いて行うとされています。0.1%次亜塩素酸ナトリウム液の場合は30分間の浸漬消毒,アルコールでは10分以上の浸漬消毒が推奨されています。文献によると,糸状菌に対しては0.2%次亜塩素酸ナトリウム液およびアルコールを用いて10分間の消毒により99.99%の殺菌効果がみられたと報告されています2)

クロルヘキシジングルコン酸塩や塩化ベンザルコニウム塩化物,両性界面活性剤などの低水準消毒薬は,常用濃度では,24時間以上接触しても効果がみられない真菌が存在するという報告もあります3)。そのため,糸状菌は消毒薬に抵抗性があり,中水準以上の消毒薬を用いることが望まれます。


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