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(1)ギラン・バレー症候群の臨床的特徴 ─疫学・診断・病型など [特集:ギラン・バレー症候群 ─今わかっていること]

登録日: 2016.12.16 最終更新日: 2025.09.20

古賀道明 (山口大学大学院医学系研究科神経内科学講師)

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ギラン・バレー症候群(GBS)は,臨床医にとって見逃すことが許されない,緊急疾患である

四肢筋力低下を主徴とする典型的GBS以外に,四肢筋力低下を示さない非典型例(臨床亜型として理解されている)があるなど,臨床像は非常に多彩である

わが国では欧米と比べ非典型例の頻度が高い

GBSは特定の先行感染・イベントとの関連が知られており,先行感染・イベントごとに特徴的な臨床像がみられる

近年はジカ熱やE型肝炎との関連が指摘されている

本症を疑うには,「四肢麻痺」や「脳脊髄液蛋白細胞解離」という所見にこだわらず,「急性進行性の経過(数日から4週間でピーク)をたどる,運動障害優位かつ自己免疫性の末梢神経障害」と理解しておくことが大切である

1. ギラン・バレー症候群(GBS)の特徴

ギラン・バレー症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)は,運動麻痺を主徴とする自己免疫性の末梢神経障害である。日単位で症状が進行し,致死的な呼吸不全や不整脈などを合併するため,急性期には全身管理を要する,臨床医にとって見逃すことが許されない緊急疾患である。
神経を専門にしない臨床家の先生方が本症を「効率よく」疑うためには,GBSの典型的な臨床像を押さえておくのがよさそうにも思える。典型的な臨床像とは,「先行感染症状」があって,急速進行性の「四肢筋力低下(特に上向性と表現される下肢から上肢への拡大)」と「四肢の腱反射の低下・消失」がみられ,脳脊髄液で「蛋白細胞解離(蛋白濃度が上昇する一方で細胞数は正常)」が確認でき,発症から1カ月以内に改善傾向を示すことであろう。もちろん,こういった点を押さえておくことは重要であるものの,GBSの病態解明が進んできた現在までに,GBSはもう少し幅広い臨床像を示すことがわかってきている。臨床医であればGBSの中に非典型的な臨床病型が存在することも押さえておいて頂きたい点である。
2009年の新型インフルエンザ・パンデミックの際にも話題になったように,GBSは各種の先行感染が契機となって発症する症例がほとんどである。現在までにGBSの発症に関与する先行感染病原体が複数同定されており,最近ではE型肝炎や,新興感染症であるジカ熱(ジカウイルス感染症)との関連が話題となっている。「先行感染」の存在の臨床的な意義は,GBSの診断を示唆するということだけにとどまらない。つまり,GBSの多彩な臨床像は,先行感染レベルで規定されていることが示唆され,先行感染ごとにどのような臨床像をきたしやすいかを押さえておくことが個々の症例を理解するにあたって重要となる。


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