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抗好中球細胞質抗体(ANCA)の診断的意義 【血管炎の1指標ではあるが,血管炎以外でも陽性となる可能性を念頭に鑑別にあたる】

登録日: 2016.11.03 最終更新日: 2025.09.20

富井啓介 (神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器内科部長) 八田和大 (天理よろづ相談所病院総合診療教育部部長)

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血管炎の徴候がなくても,血管炎のマーカーである抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)が陽性の患者が時折見受けられます。ANCAの診断的意義について,天理よろづ相談所病院・八田和大先生のご回答をお願いします。

【質問者】

富井啓介 神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器内科部長


【回答】

血管炎とは,血管壁を炎症の場とする疾患群です。“The tissue is the issue”と言われるように,診断では組織的に「血管炎」を証明することが最重要ですが,次に診断に有用な血清マーカーに抗好中球細胞質抗体(ANCA)があります。これは血管炎の主体を占める“small vessel vasculitis”の重要なマーカーとなっています。

ANCAは1982年,Daviesにより“Segmental necrotizing glomerulonephritis with anti-neutrophil antibody,possible arbovirus aetiology?”としてオーストラリアのある地域(Murray River valley)に流行したRoss River virus感染症の指標として報告1)されましたが,1985年にLancet誌に掲載された論文によって,ウェゲナー肉芽腫症〔現在は多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)〕のマーカーであることが判明しました2)

ANCAは間接蛍光抗体の染色パターンによりP-ANCAとC-ANCAにわけられますが,その対応抗原はそれぞれMyelo-per­oxydase(MPO),Proteinase 3(PR3)です。MPO-ANCAは顕微鏡的多発血管炎(MPA)の70%,PR3-ANCAは活動性のあるGPAの90%以上で陽性となり,日常臨床で頻用されています。当初,(特に後者の)特異性がきわめて高いとされましたが,事前確率の低い一般臨床の集団に用いると感度・特異度が鈍化するのは,本検査でも例外ではありませんでした。


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