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全静脈麻酔の長短

登録日: 2015.05.16 最終更新日: 2025.09.20

松永 明 (鹿児島大学附属病院手術部准教授) 上村裕一 (鹿児島大学麻酔・蘇生学教授)

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全静脈麻酔(total intravenous anesthesia:TIVA)は,吸入麻酔を使用せずに麻酔の3要素である鎮静,鎮痛,筋弛緩を,経静脈投与薬剤でコントロールする全身麻酔法である。現在,鎮静薬として蓄積性が少ない短時間作用性のプロポフォール,鎮痛薬として超短時間作用性麻薬のレミフェンタニルを用いることが多い。TIVAが普及した理由は,これらの調節性に優れた静脈麻酔薬に加え,血中濃度を予測する薬物動態シミュレーションソフトや,投与速度を自動調節するシステムtarget controlled infusion(TCI)用のシリンジポンプが普及したことである。これにより,TIVAにおいても吸入麻酔と同様に,適切な麻酔深度の維持および速やかな覚醒が可能となった。
TIVAの利点は,手術室内の吸入麻酔薬による汚染や大気汚染がないことと,手術室外での麻酔にも便利なことである。一方,シリンジポンプが必要なこと,bispectral index(BIS)などの脳波解析による麻酔深度のモニタリングが必要なこと,術中覚醒の可能性が高いこと,などの欠点がある。
さらにプロポフォールにはpropofol infusion syndrome(文献1)という重篤な合併症の危険性がある。これは,長期間投与により徐脈,脂質異常症,脂肪肝,代謝性アシドーシス,横紋筋融解などを発症するもので,特に小児での危険性が高く,そのため小児の鎮静に対してはプロポフォールは原則禁忌である。

【文献】


1) Kam PC, et al:Anaesthesia. 2007;62(7):690-701.


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