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全面対決となったディオバン事件─法廷で不正の実態が解明されるか【まとめてみました】

登録日: 2016.09.08 最終更新日: 2025.09.20

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「統計解析のお手伝いをしたことはあるが、定義に基づかない群分け、非ARB群のイベント数の水増し、あるいは解析計算結果に基づかないp値の記載等をしたことはない」

高血圧治療薬バルサルタン(商品名ディオバン)を巡る臨床研究不正事件(以下、ディオバン事件)の裁判が12月16日、東京地裁(辻川靖夫裁判長)で始まった。薬事法違反(虚偽の記事)に問われているノバルティスファーマ元社員の白橋伸雄被告(64歳)は、起訴事実に対し上記のように述べ、無罪を主張。従業員の違法行為に対して会社の刑事責任を問う両罰規定で起訴されたノバ社も無罪を主張し、両者ともに全面的に争う構えを見せている。

“降圧を超えた効果”を大々的にアピール

ディオバン事件の経緯を簡単に振り返る。
ディオバンは2000年に国内3種類目のアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)として発売され、それ以降、既存薬と比較する大規模臨床研究が大学で相次いで行われた。これら臨床研究のスポンサーはノバ社で、研究責任者の講座に多額の奨学寄附金を支給。Jikei Heart Study(JHS)を実施した慈恵医大の講座に総額約1億9000万円、Kyoto Heart Study(KHS)を実施した京都府立医大の講座には、総額約3億8000万円の資金が提供された。

JHSとKHSは心血管合併症の予防効果を非ARBと比較し、ディオバン群は対照群に比べてJHSで39%、KHSでは45%も合併症を抑制するという結果を出した。しかも両群の降圧値が同等であることから、ノバ社は「降圧を超えた効果」として大々的なプロモーション活動を展開。ディオバンは累計1兆円以上を売り上げる大ヒット薬となった。

しかし、両群の降圧値の平均値と標準偏差が奇妙に一致しているなど外部医師の疑義をきっかけに臨床研究の不正疑惑が浮上。大学の調査(表1)により不正が明らかとなり、関係論文は撤回された。

そして厚労省は2014年1月、JHSとKHSの資材を用いてディオバンの広告を行った行為が虚偽・誇大広告に該当する疑いが深まったとして東京地検に告発状を提出。同年6月、東京地検特捜部は、医薬品に関する虚偽の記事を記述したとして薬事法違反(66条1項、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科)でノバ社元社員を逮捕した。


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