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ランニング時の腹部痛機序と対処法

登録日: 2015.06.27 最終更新日: 2025.09.20

松井裕史 (筑波大学医学医療系消化器内科講師) 伊藤 紘 (筑波大学大学院人間総合科学研究科 疾患制御医学専攻)

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【Q】

ランニング開始後,間もなく左脇腹に痛みが出現し,しばらくすると消失します。その理由,予防法,発症時の対応をお教え下さい。
(東京都 O)

【A】

ランニングなどの運動時に起こる左脇腹の痛みの原因は,脾臓にあると言われています。
脾臓が果たす役割は免疫機能や造血,血球の破壊などいくつかありますが,その中に血液の貯蔵機能があります(文献1)。急激な運動をすることによって,脾臓は貯蔵されている血液を使って筋肉に酸素を供給しようとして収縮を繰り返し,左脇腹の痛みとなって現れると考えられています。
予防策としては十分な準備体操を行い,いきなりハイペースで走りはじめることは避けましょう。また,食後は胃や腸などの消化器系の臓器に血液が集中しているので,脾臓の血液量が少ない状態です。食後すぐに運動しようとすると,脾臓は少ない血液を使ってなんとか筋肉に酸素を供給しようとするため,脾臓の収縮が大きくなり腹痛が起こりやすくなります。発症してしまった場合は,無理に運動を続けることはせず,ペースを落として呼吸を整えましょう。

【文献】


1) 尾曽越文亮, 他:基礎解剖学. 朝倉書店, 1974.


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