【Q】
イチョウの葉のどの成分がアルツハイマー病(AD)の認知機能を一時的に改善するのでしょうか。その作用機序と,ほかに同様の作用を持つ植物があればご教示下さい。 (群馬県 K)【A】
イチョウの葉から抽出した化合物(イチョウ葉エキス)には種々の生物活性物質が含まれています。中でも重要な物質は,フラボノイド配糖体とテルペノイドです。わが国の健康食品業界の規格品では,フラボノイド配糖体を24%以上,テルペノイドを6%以上含有し,アレルギー物質であるギンコール酸の含有量が5ppm以下であること,が条件づけられています。フラボノイド配糖体とテルペノイドは抗酸化作用,血液凝固抑制作用,血液循環改善作用を示し,加えてβアミロイド蛋白凝集によるオリゴマーやアミロイド線維の形成を阻害します(文献1)。最近,フラボノイドの一種であるケルセチンがβアミロイド蛋白の合成を阻害することが認められました(文献2)。さらに,ケルセチンがリン酸化タウ蛋白の海馬への蓄積を抑制すると報告されています(文献2)。
βアミロイド蛋白やリン酸化タウ蛋白が凝集して神経細胞に毒性を示すことは証明されており,この毒性を阻害することがAD治療に有効と考えられます。しかし,イチョウ葉エキスのADへの効果が一時的で,予防や根本治療となりえない理由は不明です。
イチョウの葉以外に,米ヌカに含まれるフェルラ酸にもβアミロイド蛋白による神経毒性抑制を介してAD初期の人の認知機能を改善させる効果のあることが証明されています(文献3)。
【文献】
1) Luo Y, et al:Proc Natl Acad Sci U S A. 2002;99(19):12197-202.
2) Sabogal-Guaqueta AM, et al:Neuropharmacology. 2015;93C:134-45.
3) 中村重信, 他:Geriatr Med. 2008;46(12):1511-9.