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橈骨遠位端骨折に伴う尺骨茎状突起骨折への対応

登録日: 2015.11.07 最終更新日: 2025.09.20

森友寿夫 (大阪行岡医療大学教授/ 行岡病院手の外科センター)

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【Q】

高齢者に多い橈骨遠位端骨折には,近年,掌側ロッキングプレートによる手術治療の良好な成績が報告され,広く実施されています。この骨折には尺骨茎状突起骨折がしばしば合併しますが,手術治療を必要としないことも多いように思います。
橈骨遠位端骨折に伴う尺骨茎状突起骨折はどのように考えるべきでしょうか。大阪行岡医療大学・森友寿夫先生のご教示をお願いします。
【質問者】
仲西康顕:奈良県立医科大学整形外科

【A】

結論としては,基本的に尺骨茎状突起骨折を治療する必要はありません。橈骨遠位端骨折後の後遺症として手関節尺側部痛が問題になることがありますが,その主な原因は,以下の通りです。
(1)橈骨の短縮などの矯正不良による尺骨突き上げ症候群の発生
(2)三角線維軟骨複合体(triangular fibrocartilage complex:TFCC)損傷による遠位橈尺関節不安定症
(2)について,尺骨茎状突起骨折の有無とTFCC断裂の有無とは基本的に相関しませんので,術前にTFCC断裂診断はできません。したがって,TF
CC断裂の有無はプレート固定後に遠位橈尺関節不安定性の有無を術中に徒手で検査するしかありません。
近年の研究で,橈骨遠位骨片の橈側偏位が残存すると遠位橈尺関節不安定性が残存しやすいことがわかっています。したがって,(1)に対しては橈骨の短縮,(2)については橈骨遠位骨片の橈側偏位を特に注意して整復固定ができれば,基本的に尺骨茎状突起骨折を治療する必要はありません。
ただし,例外としてGaleazzi骨折(橈骨骨幹部または骨幹端部骨折により橈骨が短縮し,尺骨頭が遠位背側に脱臼する病態),Essex-Lopresti脱臼骨折(橈骨頭骨折に遠位橈尺関節の脱臼を伴う病態)では骨間膜損傷が合併するため,尺骨茎状突起骨折およびTFCCをきっちりと治療する必要があります。

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