2型糖尿病(DM)例に対するGLP-1/GIP受容体作動薬・チルゼパチドには、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)よりも強力な「感染症抑制」作用があるかもしれない。9月28日からミラノ(イタリア)で開催された欧州糖尿病学会(EASD)学術集会にて、大規模ランダム化比較試験(RCT)"SURPASS-CVOT"の追加解析として、ピサ大学(イタリア)のStefano Del Prato氏が報告した。
わが国DM例の2割弱が感染症で死亡している現状(後述)を考えると、看過できない成績ではないだろうか。
SURPASS-CVOT試験の目的は、すでに心血管系(CV)疾患を有する2型DMにおける、チルゼパチドとデュラグルチドによるCVイベント抑制作用の比較である。1万3299例がランダム化され、二重盲検法で4年間(中央値)観察された。
その結果、「体重」と「HbA1c」はチルゼパチド群で有意に低下した。しかしこのようにCVリスクが改善されたにもかかわらず、チルゼパチド群の「CV死亡・心筋梗塞・脳卒中」(1次評価項目)発生リスクはデュラグルチド群と有意差を認めなかった。ただし、2次評価項目の「死亡」は、チルゼパチド群で有意に減少していた(治療必要数[NNT]:中央値4年間で63)。
今回報告されたのは、その「死亡」の内訳である。
すると「CV死亡」は両群間に差はなく、チルゼパチド群で減少が有意だったのは「非CV疾患による死亡」だった(ハザード比[HR]:0.75、NNT:100)。
「非CV死亡」の内訳を見ると、最も多かったのは両群とも「感染症死」である(ついで「悪性腫瘍死」)。そしてこの感染症死を、チルゼパチドはデュラグルチドに比べ有意に抑制していた(HR:0.56、NNT:112)。発生率曲線を見ると、両群の感染症死発生率は試験開始直後から乖離が始まり、試験終了まで差は広がり続けた。これらの結果はCOVID-19による死亡を除外しても同様だった。一方、「悪性腫瘍死」リスクは両群間に有意差を認めなかった。
なお、チルゼパチドによる2型DM例「感染症」増悪抑制を示唆する成績はこれだけではない。2万例弱を対象としたRCT模倣比較においてもチルゼパチドは、GLP-1RAに比べ「死亡」HRが有意に低く(0.60)、また後付け解析ではあるが「肺炎入院」HRも0.73の有意低値だった[Diabetes Care. 2026(学会報告は2025年の米国糖尿病学会でSURPASS-CVOT報告よりも先)]。
「感染症」はわが国DM患者の死因として2番目に多い(17%。最多はがんの39%)[Diabetol Int. 2024]。それを考えると、「感染症増悪抑制」を示唆するこれらのデータは、興味深いものではないだろうか。感染症を1次評価項目としたRCTの実施が待たれる。
SURPASS-CVOT試験はEli Lillyから資金提供を受けて実施された。報告解析に関する利益相反は開示がなかった。