連載開始にあたって
医療DXに関する制度が次々と動き出す中,「自院にはどう関係するのか」「何を確認し,どう対応すればよいのか」と戸惑う場面もあるのではないでしょうか。本連載では,オンライン診療やAIの活用などに関する制度を,現場で生じうる場面から読み解きます。筆者が行政,医療機器開発,クリニック運営に携わってきた経験をふまえ,制度で決まったことと,なお判断が必要なことを整理し,日々の診療や経営に役立つ視点をお届けします。
「先生のクリニックを,オンライン診療受診施設の連携医療機関として掲載させて頂けませんか」
もしそう打診されたら,読者の先生方はどう判断されるでしょうか。
2026年5月から,駅構内のブースでオンライン診療を受けられるサービスが首都圏で始まっています。ブースの予約は必要ですが,診察の事前予約は不要で,受付から会計まで約15分。オンライン診療受診施設(このサービスでは,首都圏の駅に設置されたブース)は,医療機関と協定・契約を結んで連携することが想定されており,その場合には,受診施設の設置者によって連携医療機関の名称等が公表されます1)2)。
こうした形が成り立つようになったのは,2026年4月1日に施行された改正医療法と関係省令があるからです。改正の柱は2つです。1つは,オンライン診療そのものを医療法において定義した上で,これまで「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で示されてきた最低限守るべき事項を省令に引き上げ,違反があれば都道府県知事等が是正を命じられるようにしたこと。もう1つが,患者さんがオンライン診療を受ける「場所」について新しい枠組みを設けたことです。
この連載では毎回,動き出した制度が自院の日常にどう現れるのかを扱います。第1回は,改正医療法に示されたオンライン診療に関して,「オンライン診療受診施設」を取り上げます。
「診療所ではない」けれど,新しい医療提供施設ができた
まず押さえておきたいのは,この「オンライン診療受診施設」が医療法の中に位置づけられたことです1)。厚生労働省の施行通知は,今回の改正について,「医療法上の医療提供施設の一つとして,患者がオンライン診療を受ける施設である『オンライン診療受診施設』を位置づけ,診療所と比較して簡素な要件・手続等のもとでの整備を可能とする」と説明しています2)。
ただし,オンライン診療受診施設は,病院や診療所ではありません。医師が患者さんと対面で医業を行う場所は,従来通り病院・診療所に該当し,許可や届出が必要です。ですから,オンライン診療受診施設に医師が出向いて患者さんと同席し,対面で診ること(D to P with D)はできません。もちろん入院も受け入れられません3)。
もう1つ,受診施設に関する広告では,「当該施設が医療を提供するものではない旨」を患者さんが理解できる方法で明示しなければなりません1)2)。オンライン診療受診施設は,医療法上は「医療提供施設」ですが,診療を提供する主体はこの施設ではなく,あくまで医師と医療機関です。この二重の性格が,新しい制度の特徴です。