検索

×
絞り込み:
124件
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

FOCUS:ここまで見える神経エコー〈末梢神経の描出と評価の実践〉

登録日: 2026.09.25 最終更新日: 2026.09.25

野寺裕之 (天理よろづ相談所病院神経筋疾患センターセンター長/脳神経内科副部長) 杉山慎太郎 (天理よろづ相談所病院臨床検査部) 馬場創汰 (天理よろづ相談所病院臨床検査部) 吉岡明治 (天理よろづ相談所病院臨床検査部)

お気に入りに登録する

天理よろづ相談所病院神経筋疾患センターセンター長/脳神経内科副部長
野寺裕之
1993年京都大学医学部医学科卒業。国内および米国で脳神経内科と臨床神経生理学の臨床研修を行う。神経筋超音波研究会では代表世話人を務める。
杉山慎太郎,馬場創汰,吉岡明治
天理よろづ相談所病院臨床検査部
私が伝えたいこと
◉末梢神経をエコーで観察することで,絞扼,腫瘤,外傷などの背景疾患が推察できる。
◉末梢神経の腫大が観察できれば,絞扼性,腫瘤性,脱髄性末梢神経障害などの疾患が鑑別診断にあがり,腫大の分布が診断の鍵となる。
◉末梢神経エコーは神経伝導検査などの生理検査やMRIとの併用により病態解明にさらに寄与することができる。

❶ はじめに─神経エコーで何を評価するか

神経エコーとは,超音波を用いて末梢神経を形態的に評価する検査である。近年の超音波診断装置の進歩により空間分解能は飛躍的に向上し,従来は困難であった末梢神経の詳細な描出が可能となった。これに伴い,神経エコーに関する研究が進み,末梢神経障害の診断における有用性が広く認識されるようになっている1)。

神経エコーの利点は,非侵襲的でリアルタイムに観察できることに加え,神経と周囲組織との位置関係を同時に評価できる点にある2)。これにより,絞扼性ニューロパチーのみならず,腫瘤や血腫などによる物理的圧迫,外傷性変化なども評価可能であり,日常診療において幅広く活用できる。

一方で,神経エコーは「神経が見えるかどうか」ではなく,「何を評価するか」が重要な検査である。本稿では,非専門医でも再現可能な基本手技に加え,「神経をどのように描出し,どこを確認すれば評価できるか」という視点から実践的に解説する。

❷ 末梢神経の正常像と基本的な見え方

(1) 末梢神経の構造とエコー像

末梢神経は,神経線維が束になった神経束(nerve fascicle)が集まって構成される。それぞれの神経束は薄い神経周膜により囲まれ,さらにそれらを神経上膜が覆っている。神経上膜内の間質には膠原線維や血管,脂肪などが含まれる。

超音波画像では,神経周膜や神経上膜は高輝度に,神経束は低輝度に描出される。そのため,短軸像では低輝度の点状構造が高輝度に囲まれた蜂巣状構造(honeycomb structure)を呈する(図1)3)。長軸像では,神経束に沿った線状構造として観察される。

神経エコーで最も重要なのは,「何を評価するか」を明確にすることである。本稿では,評価の視点を以下の3点に整理する。

①形態(structure):神経の腫大や形状変化を評価する。短軸像で断面積(cross sectional area:CSA)を測定し,客観的評価を行う
②内部構造(echotexture):神経内のエコー輝度や構造の均一性を評価する
③動態(dynamics):関節運動や圧迫時の神経の滑走性や変形を評価する

この3つの視点を意識することで,再現性の高い評価が可能となる。

(2) 末梢神経の観察方法

末梢神経の観察は,まず短軸像で神経を同定し,遠位部から近位部へ連続的に走査することが基本である。異常が疑われる部位では,長軸像も併用して詳細に観察する。

プローブ走査においては,軽度の圧迫を加えることで画像のコントラストが向上するが,過度な圧迫は神経の変形をきたすため注意が必要である。神経と血管の鑑別には圧迫法やカラードプラ法の併用が有用である。血管は圧迫による虐脱や血流信号を認めるのに対し,神経は圧迫による形状変化が乏しく,血流信号も認めない点で両者を鑑別できる(動画1,2)。走査中に神経を同定できなくなった場合は,遠位部で神経を再度同定し,そこから連続的に観察することを推奨する。

また,末梢神経は蛇行しながら走行するため,超音波ビームが神経に対して垂直に入射しないと境界が不明瞭となる(図2)。断面積は,神経が最も小さく描出される断面で評価することが重要である。さらに,フォーカスを神経の深さに合わせることで,神経の境界や内部構造の描出が改善する。

(3) 末梢神経の計測と評価

末梢神経は,短軸像で断面積〔CSA(mm2)〕を計測し,長軸像で直径〔diameter(mm)〕を計測する。断面積の計測はFree TraceまたはEllipseで行うが,再現性の観点から施設内で統一することが望ましい。計測時は神経上膜の内側をトレースし,筋膜などの周囲組織を含めないように注意する(図3)。超音波による末梢神経の基準範囲は様々な報告があるが,参考として当院の基準範囲を表1に示す。神経の断面積は年齢や性別,体格などの影響を受けるため4)5),単一の基準値に依存せず,左右差や連続性を評価することが重要である。

「基準範囲」はあくまで参考
神経の断面積は年齢や性別,体格などに影響するため,計測部位が基準範囲内であっても,左右差をみると腫大している場合や連続的に評価することで部分的な内部構造の異常に気づくことがあるので注意する。

❸ 末梢神経の異常所見

神経エコーにおいて最も重要な異常所見は,「神経の腫大」である。神経障害では,脱髄や軸索障害に伴う神経線維の変性により,神経の腫大や断面積の増加を認める。腫大した神経では,しばしばエコー輝度の低下や内部構造の不均一化を認める(図4)。これは,炎症や脱髄に伴って炎症細胞の浸潤や神経線維の大小不同が生じ,神経束内の構造が乱れるためと考えられる。

また,神経の絞扼や腫瘍・血腫などによる圧迫がある場合には,病変の近位側で神経の腫大を呈することが多い。これらの異常所見を認めた際には,腫大の分布を評価することで病態の推定が可能となる(表2)。局所的な腫大は単ニューロパチー,多発性の腫大は多発ニューロパチーを示唆する所見である。さらに,左右差や病変の連続性,周囲組織との関係,血流増加の有無などを総合的に評価することで,診断精度をさらに高めることができる。

「腫大の分布」を評価する
神経の腫大している部位が“局所的”であるのか,“多発”しているのかで考慮すべき疾患が異なる。局所的であれば,近傍に神経の絞扼部位や腫瘍・血腫などによる圧迫部位がないかを評価する。

この記事の全文はこちらから購入できます

→プレミアム会員はこちらから全文読めます


◀ 1 ▶