
20歳代,女性。両手指背に多発する疣贅を主訴に受診した。近医による凍結療法治療歴があり,痛みを伴う治療に対しては忌避的であった。しかし,凍結療法はエビデンスの高い治療法であることや,一部の疣贅に対する治療で全病変が治る場合があることなどを説明して,治療の了解を得た。右手第3指背の1病変(図1)を選んで1週間ごとに計3回の凍結療法を行ったところ,約1カ月後には全病変が消失した(図2)。
本患者で観察された疣贅の治癒現象は,何と呼ばれるか。
①アブスコパル様効果
②バイスタンダー効果
③ケブネル現象
④BOTEサイン
⑤プラセボ効果
疣贅治療における液体窒素凍結療法(cryotherapy)のメカニズム
(1)直接的細胞障害:氷晶形成と融解ストレス
疣贅治療における凍結療法の最も基本的な作用は,急速凍結による感染細胞の直接的な破壊である。液体窒素による急冷下では,細胞内に微細な氷晶が形成され,細胞膜や細胞小器官が機械的損傷を受ける。また,細胞外の氷晶形成によって細胞周囲の浸透圧が上昇し,細胞は脱水・収縮をきたす。この過程で蛋白変性や膜構造の不安定化が進行し,凍結障害は不可逆的となる。融解期には細胞が急激に再膨張するため,膜破綻やアポトーシスシグナルが誘導される。これら一連の変化は,ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した角化細胞を効率的に除去する基盤となる。さらに,凍結・融解を繰り返すことで損傷が増幅されることが知られている。