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米国で1万例超:サイクロスポーラ症のアウトブレイク[感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー(51)]

登録日: 2026.09.24 最終更新日: 2026.09.24

石金正裕 (国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

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●サイクロスポーラ症とは1)2)

サイクロスポーラ症は,原虫Cyclospora cayetanensisによって引き起こされる腸管感染症です。アジア,アフリカ,中南米などの熱帯・亜熱帯地域でみられ,流行地域以外では海外渡航者や,汚染された輸入野菜・果物などを介した感染が問題となります。日本で診断される症例も海外で感染した例が多いとされています。

感染は,環境中で成熟したオーシストに汚染された飲料水や,生野菜・果物などを経口摂取することで成立します。患者から便中に排出された直後のオーシストには感染性がなく,環境中で成熟して初めて感染性を獲得することが特徴です。このため,一般的には患者から患者への直接感染は起こりにくいと考えられています。

潜伏期間は平均約1週間で,水様性下痢や腹痛を主症状とし,食欲不振,体重減少,悪心,微熱などを伴います。下痢が数週間続くことが特徴で,いったん改善した後に症状が再び出現することもあります。小児,高齢者,HIV/AIDSなどの免疫不全者では脱水や重症化に注意が必要です。治療にはスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)合剤が推奨されています。日本では,感染症法に基づく届出対象疾患ではありません。

●米国でアイスバーグレタスによる大規模アウトブレイクの発生2)

2026年夏,米国でアイスバーグレタスを原因とするサイクロスポーラ症の大規模アウトブレイクが発生しました。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)と米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)は当初,インディアナ州,ケンタッキー州,ミシガン州,オハイオ州,ウェストバージニア州のTaco Bell店舗で提供された細切りアイスバーグレタスとの関連を調査していました。患者からの聞き取りでは,食事内容が確認できた症例の90%がアイスバーグレタスを摂取していました。

追跡調査によって,メキシコ中部から供給されたTaylor Farms de Mexico社のアイスバーグレタスが原因として浮上し,7月17日に同社は対象製品の自主回収を開始しました。その後,Taco Bell店舗での曝露だけでなく,回収対象となったレタスを摂取した患者もアウトブレイク症例に加えられました。

9月3日時点で,患者は20州から計1万1458例報告され,少なくとも495例が入院し,ミシガン州では基礎疾患を有する2例が死亡しました。発症日は6月14日から8月15日に及んでいます。FDAは実際の患者数はさらに多い可能性があるとしていて,症例がアウトブレイクに関連するか確認されるまで最大6週間程度を要することから,今後も患者数が増加する可能性があります。

今回の事例は,生鮮野菜が国境を越えて広範囲に流通する現代において,寄生虫感染症も大規模な食中毒アウトブレイクを起こしうるということを改めて示しました。日本でも,海外渡航歴のある患者だけでなく,「長引く水様性下痢+生野菜・輸入食品の摂取歴」を認める場合には,サイクロスポーラ症を鑑別疾患に挙げることが重要です。日本では届出対象疾患ではありませんが,原因不明の遷延性下痢を診療する際には,「忘れてはいけない原虫感染症」のひとつと考えられます。

【文献】

1) 日本感染症学会:サイクロスポーラ症.(2026年9月11日アクセス)

2) 米国CDC:Cyclospora Outbreak Linked to Iceberg Lettuce.(2026年9月11日アクセス)

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。


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