2026年に改訂された最新の『KDIGOガイドライン(KDIGO 2026)』17)を読んで,筆者は衝撃を受けた。これまで「日本の常識」として定着していた管理基準が,世界標準(global standard)から大きく乖離していることが浮き彫りになったからである。

(1) 鉄補充療法のパラダイムシフト
『慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン』(日本透析医学会)では,フェリチンが100ng/mLを超える場合には鉄剤投与に慎重な姿勢がとられてきた。一方,KDIGO 2026では,鉄補充をより積極的に位置づける方向へ舵が切られている(表4)。

PIVOTAL試験41)などのエビデンスに基づき,鉄を十分に満たすことで,ESAやHIF-PH阻害薬の使用量を最小限に抑え,副作用リスクを低減するという考え方が強く打ち出されるようになった。つまり,「鉄を避ける」のではなく,「ESAを減らすために鉄を使う」という発想への転換である。
KDIGO 2026は500ng/mLまでの積極投与を許容しているが,日本人のデータが乏しい現状では,まず300ng/mL程度を当面の目標とする姿勢が現実的と考える。また,前回執筆時の2022年と比べて,医療機関の経営環境はさらに厳しくなっている印象がある。ESAやHIF-PH阻害薬は高額であり,コスト面も含めて適正使用を考える場面は増えている。
ESAおよびHIF-PH阻害薬についても,新たな知見をふまえて位置づけの整理が進んでいる。日本では広く普及しているHIF-PH阻害薬だが,KDIGO 2026ではその位置づけが厳格化されている。
•第一選択は「ESA」:長期的な安全性が確立されているESAが第一選択薬として推奨(2D)されている。
•HIF-PH阻害薬の懸念点:血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の動員による血管新生リスクが考慮され,「活動性癌」「血栓症」「増殖性網膜症」「多発性嚢胞腎」などの既往がある症例では,厳格に回避すべきと明記された。
•使いわけの視点:利便性(経口薬)だけで選ぶのではなく,安全性を最優先し,リスクのある症例では従来通りESAを選択する。