(2) Hb目標値の「デッドライン」は11.5g/dL
もう1点,Hbの目標値がかなり変わってきている。前述のように日本の目標値(13g/dL未満)に対し,KDIGO 2026はさらに低い上限を設定した。成人患者では,11.5g/dLを超えないように管理することが推奨されている。
この背景には,Hb値の正常化をめざす過剰な造血刺激が,血圧上昇や血栓リスクの増加,ESA毒性を助長し,特に心不全や虚血性心疾患を有する患者では予後を悪化させる可能性が示されてきたことがある。
これまで述べてきたCREATE,CHOIR,TREATなどの試験結果をふまえると,現在は「正常化をめざす」のではなく,「利益とリスクのバランスが取れる範囲に留める」という考え方に変化してきたと言える。現時点では,その1つの目安がHb 11.5g/dLと位置づけられている。
(3) 臨床の「勘」をハイブリッドさせる:MCVの重要性
最新のガイドラインを読み解く一方で,臨床医としての「目」も重要である。腎性貧血診療では数値だけでは拾えない情報も多い。
•MCV(平均赤血球容積)のモニタリング:ESAやHIF-PH阻害薬を使用している場合,MCVは通常95~105fLと高値を示す。もし治療中にもかかわらずMCVが85fL未満に低下した場合は,「鉄欠乏」のサインと考える。
•隠れた疾患を見逃さない:鉄の吸収不良(アドヒアランス低下)だけでなく,消化管出血(がんの潜伏)や婦人科疾患による失血を疑い,便潜血検査や専門医への紹介を速やかに検討すべきである。高用量ESA使用例で発がん増加を示した報告もあるが,筆者は「高用量ESAが発がんを増やした」というより,「背景に悪性腫瘍が存在したために高用量ESAを必要とした」と解釈している42)。
◆
このように,腎性貧血診療ではガイドラインを理解するだけでなく,反応性や検査値の変化を通じて背景病態を読み取る視点も重要である。

※この記事は,FOCUS「腎性貧血診療アップデート〈KDIGO 2026をふまえて〉」の一部を抜粋・編集したものです。文献リスト等については,製品版を参照ください。