2026年6月26日の財務省・財政制度等審議会の春の「建議」(以下、財政審「建議」)は、「医療」部分の冒頭(65頁)で、出所を示さずに「医療政策のトリレンマ」(医療の質の確保、患者アクセスの保障、医療提供のための負担の抑制の「3つを同時に達成することは極めて困難」)を主張しました。しかし、7月21日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026」(「骨太方針2026」)は、この考えを採用しませんでした。
私は、2019年と2021年の本連載(『日本医事新報』4984号、58頁、および5058号、54頁)で、「トリレンマ説」について検討し、それがアメリカ生まれの「ローカルな仮説」にすぎないと指摘していたので、この結果は当然だと思いました。しかし、複数の友人から、最近も、多くの有力医師等が、「トリレンマ」や、それと同義の「オレゴンルール」を中医協等の公式会議やSNS上で、「世界の常識」「世界で認められている」と主張していると教えていただきました。そこで、5年ぶりにPubMed等を用いて、内外の最新文献・情報を検索しました。
本稿では、まず上記2論文のポイントを紹介し、次に今回の文献検索で得た知見を示し、「トリレンマ」「オレゴンルール」説が不適切で、しかも「時代遅れ」でもある理由を述べます。