検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

【薬剤別】血中濃度の目安から考える! 抗不整脈薬の安全な用量調節

登録日: 2026.08.26 最終更新日: 2026.08.27

志賀 剛 (東京慈恵会医科大学臨床薬理学講座教授)

お気に入りに登録する

ここでは,各抗不整脈薬の血中濃度依存性の有害薬物反応を回避するために,血中濃度モニタリングの実際と用量調節の考え方について概説する。

(1)Ⅰ群薬

尿中未変化体排泄率の高いピルシカイニド,シベンゾリン,ジソピラミド,フレカイニドなどは,個々の腎機能により腎クリアランスが影響を受け,血中濃度が変化するため,血中濃度モニタリングが推奨される。腎機能は生理的にも変化するため,安定していても年1回は確認しておくことが望ましい。一方,肝代謝型のプロパフェノン,アプリンジンはCYP2D6で代謝されるため個人差が大きく,単純に用量から血中濃度を予測することが困難である。このため,血中濃度が治療域にあるかを確認するだけでも安全性の担保につながる。また,シベンゾリンは血中濃度が400ng/mLを超えると低血糖発現のリスクが高まるため,血中濃度の確認が重要である。

(2)アミオダロン

アミオダロンは脂溶性が高く,脂肪組織への分布が著明で,分布容積は106L/kgと非常に大きい。消失半減期は14~107日と長く,定常状態になるまで9~12カ月を要する。このため,同じ用量であっても時間とともに体内に蓄積していく。さらにアミオダロンはCYP3A4で代謝され,活性代謝物であるデスエチルアミオダロンはアミオダロンと同等の薬理作用を有するだけでなく,毒性も同等あるいはより強いとされる。したがって,両者の薬物動態を把握するために血中濃度モニタリングは欠かせない。

アミオダロンの心外性薬物有害反応の多くは,血中濃度依存性である。日本では欧米に比して低用量で用いられており,通常用量で血中濃度が2000ng/mLを超えることはまずない。このため,濃度依存性と言われる肝や神経,皮膚に関する副作用の頻度は欧米に比べ低い。

しかし,肺毒性については日本人においてデスエチルアミオダロンの血中濃度が600ng/mL以上になると約10%に肺毒性が発現し,デスエチルアミオダロンはアミオダロンよりも肺胞細胞への毒性が強いことが報告されている22。このため,肺毒性を回避するには,有効性を維持しうる最小用量を用いることが求められる。

(3)ベプリジル

ベプリジルは主にCYP2D6により代謝されるため,用量から血中濃度を予測することは難しい。特にベプリジルはQT延長およびそれに伴う多形性心室頻拍・心室細動発現のリスクが高く,治療上の大きな問題となる。QT延長と血中ベプリジル濃度には関連が認められ,日本人では血中濃度が800ng/mLを超えるとQT延長のリスクが高くなることが報告されている21。また,そのクリアランスは加齢とともに低下するため,高齢者では低用量化と血中濃度の確認が必要となる。ベプリジルの用量は70歳代で最大100mg/日,80歳以上では50~75mg/日にとどめておくのが安全である。

(4)ジゴキシン

ジゴキシンは安全域と中毒域が接しており,血中濃度あるいは生体・病態の変化により薬物有害反応(ジギタリス中毒)が出現する。ジゴキシンは尿中未変化体排泄率が70%と高く,半減期が36~48時間と長い。また,骨格筋に分布し分布容積が4~7L/kgと大きいことから血液透析では除去されない21。ジゴキシン使用時に血中濃度モニタリングが有用である理由として,以下の3点が挙げられる。

第一に,高血中濃度で心外性薬物有害反応が発現することである。日本人での検討によると,血中ジゴキシン濃度が1.5ng/mL以上になると悪心,嘔吐,食欲不振などの消化器症状の副作用が出現してくる例がある。

第二に,尿中未変化体排泄率が高く,腎機能を含めた病態の変化が血中濃度に影響することである。多くの心不全患者や高齢者では分布容積や腎機能の低下が認められ,水分や塩分摂取量の変化などによって,ジゴキシンの血中濃度も容易に変動する。

第三に,P-糖蛋白質を介した薬物動態学的相互作用があることである。アミオダロンやベラパミルの併用により血中濃度が上昇することが知られている。

血中ジゴキシン濃度の治療域は,効果が得られる範囲で低濃度が望ましい。安全性を加味した場合,治療域は0.5~0.9ng/mLが妥当と考える。

※この記事は,FOCUS「突然死を防ぐために! 抗不整脈薬の薬物有害反応を理解する」の一部を抜粋・編集したものです。


1