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職場検便で陽性,医療機関で陰性?食品従事者のサルモネラ保菌判定における「検体採取法」の落とし穴[学術論文]

登録日: 2026.08.24 最終更新日: 2026.08.24

田島雄太 (藤田医科大学総合診療科) 下村千尋 (豊田地域医療センター総合診療科) 野口善令 (藤田医科大学総合診療プログラム指導医/豊田地域医療センター総合診療科学術教育顧問) 大杉泰弘 (藤田医科大学総合診療科教授)

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Point

食品従事者における無症候性サルモネラ保菌の判定では,医療機関で一般的に行われている「直腸スワブ(綿棒)」による検体採取では感度が不十分となり,職場検診との結果に乖離を生じることがある。

今回,職場検診で陽性となったものの,当院での直腸スワブ検査では偽陰性を繰り返し,最終的に自然排便を用いた検査によって判定の齟齬を解消しえた一例を経験した。

本事例では,無症候性保菌者は有症状者と比較して菌量が著しく少ないことが背景にあると考えられた。

就業制限が課される食品従事者の除菌判定においては,適切な検体採取方法の選択と増菌培養の重要性を再認識する必要がある。

1. はじめに

非チフス性サルモネラ感染性下痢症は食中毒の重要な原因であり,食品従事者が保菌者となった場合には,労働安全衛生法上,厳格な管理が求められる。一般的にサルモネラ腸炎の診断では,直腸スワブによる検体採取が簡便であり,有症状期の診断には有用とされる。しかし,無症候性保菌者の検索や除菌判定においては,直腸スワブ検査の感度は十分でない可能性がある。

今回,大量調理施設に勤務する女性において,職場検診では陽性であるものの,当院での検査では陰性となる結果が繰り返される事例を経験した。その原因として検体採取方法の違い(自然排便 vs. 直腸スワブ)が関与している可能性が示唆されたため,プライマリ・ケア医が注意すべきピットフォールとして報告する。

2. 症例

患者:50歳代,女性。

主訴:職場検便でのサルモネラ菌陽性の精査。

既往歴:特記事項なし。

現病歴:大量調理施設への入職時に実施された検便(自然排便を用いた検査会社での培養)において,サルモネラ属菌が検出された。職場より医療機関での確認を求められ,当院を受診した。9カ月前に下痢症状の既往があったと言うが,受診時は無症状であった。来院時,排便がなく,直腸スワブを用いて肛門内を拭い検体を採取し,培養検査に提出したが,結果は「陰性」であった。その結果を受けて本人は就業を希望したが,施設の規定により2週間後に自然排便による再検査が実施され,再び「陽性」と判定された。再度当院を受診したものの,今回も院内で排便が得られず,前回と同様に直腸スワブで検体を採取したが,その結果は再び「陰性」であった。職場での検査は「陽性」,医療機関での検査は「陰性」という結果の乖離が,2回続けて生じた。

経過と転帰:この乖離の原因として,「検体採取量」および「菌量」の問題を疑った。そこで当院での3回目の検査では,当院にて自然排便そのものを検体として採取し,検査会社に対して「増菌培養」を含めた検査を依頼した。また,同時期に職場検診でも同様の検査が実施された。 

最終的に,最初の受診から1カ月後の時点で,当院および職場検診の双方の検査結果はいずれも陰性となり,排菌消失と判断した。

3. 考察

本事例の核心は,「有症状者」と「無症候性保菌者」とでは,診断に必要な菌量や,適切な検体採取方法が異なるという点にある。


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