自宅に潜む危険
2024年には約4万5000人が不慮の事故で亡くなっています。高齢者に限ってその原因に注目すると、65~84歳では溺水が、85歳以上では転倒・転落が最も多くなっています。いずれも、入浴中の溺水や階段での転落など、自宅で発生する事故(家庭内事故)が多いようです。
国民生活センターが、医療機関ネットワーク事業情報をもとに、家庭内事故で医療機関を受診した高齢者について分析した結果を公表しました。それによると、事故原因としては転倒・転落が最も多く、75歳未満では42.0%、75歳以上では56.7%を占めていました。段差で足を引っかける、階段で転倒する、ベッドから転落する、などが主な事例で、その結果、約2割の人が骨折をしていました。
また、転倒・転落についで多かった原因として、75歳以上では誤飲・誤嚥が挙げられました。食べ物を誤嚥することが多いかと思っていましたが、実際には薬をPTPシートごと内服してしまった、義歯を飲み込んでしまった、という事例が多かったようです。
見過ごされる家庭内事故
高齢者の事故についてですが、介護保険サービスにおける事故は市町村に報告することが義務づけられています。すなわち、死亡事故や医師の診断を受けて何らかの治療が必要になった事故は、発生から5日以内に概要を報告することになっています。したがって、事故の発生頻度や特徴を把握できるようになり、その分析結果をもとに予防対策を進めることができます。
また、介護施設では事故防止対策の整備が省令で義務づけられています。運営基準で定められた、事故発生防止のための措置が講じられていない場合には、介護における基本報酬が減算されますが、安全対策部門を設置して組織的に安全対策を実施する体制が整備されている場合には、報酬が加算されることになっています。
一方、家庭内事故については、死亡例は異状死として届け出が行われますが、それ以外の事故は報告義務がありません。したがって、正確な実態が把握できません。それゆえ、家庭内事故の予防対策は進んでいないというのが現状です。
家庭内事故を防ぐために
高齢者の事故予防について社会でも注目が集まっています。交通事故による死者の半数以上を高齢者が占めていることから、高齢歩行者に注意を払うよう啓発されています。また、警察庁によると、2025年に1万7345人の認知症(疑いを含む)の人が行方不明になっており、573人が死亡した状態で発見されました。高齢者の徘徊についても注目されており、行方不明になった認知症(疑いを含む)の人のうち、所在が確認された人の47%は民間の通報を端緒としていました。
このように、高齢者の事故や安全対策への関心が高まる中で、家庭内事故についても多くの方に目を向けて頂きたいです。消費者庁の調査によると、高齢者の転倒事故の約半数は自宅で発生しています。多くの方が家庭内事故の危険性を理解し、予防対策を講じることで、負傷者を減らすことができると思います。
最近では、訪問看護や訪問診療など、医療従事者が高齢者の自宅を訪れる機会が増えています。その際、危険な段差や、異物を誤飲しやすい状況を目にすることがあると思います。ぜひ生活環境に目を配り、事故予防対策について助言して頂きたいです。