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FOCUS:小児てんかん重積状態 初期対応と原因検索実践ガイド

登録日: 2026.08.21 最終更新日: 2026.08.21

西山将広 (神戸大学大学院医学系研究科内科系講座小児神経学・発達行動小児科学部門特命准教授)

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神戸大学大学院医学系研究科内科系講座小児神経学・発達行動小児科学部門特命准教授
西山将広
2006年広島大学卒業。姫路赤十字病院で研修,神戸大学大学院修了。兵庫県立こども病院や神戸大学医学部附属病院を中心に,小児の神経疾患診療や救急診療に長く携わっている。小児科専門医,日本小児神経学会専門医,日本てんかん学会専門医。小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン改訂WG委員長。
私が伝えたいこと
◉てんかん重積状態(SE)は,様々な背景疾患の結果として生じる症候である。
◉背景疾患の診断と治療を念頭に置き,適宜,診断と治療の方向を修正する。
◉「発作を止める」ことは中間目標であり,「脳障害を防ぐ」ことが最終ゴールである。
◉「脳障害を防ぐ」ためには,迅速かつ確実な発作停止が求められる。静脈路確保が困難な場合,静脈ルートに固執することなく,非静脈投与を選択する。
◉「脳障害を予測する」ための重要なポイントは,意識障害である。
◉発作負荷(seizure burden)は予後と関連する。急性脳炎・脳症はseizure burdenと予後不良の関連が強く,発作コントロールが特に重要な疾患群である。

❶ てんかん重積状態(SE)とは

てんかん重積状態(status epilepticus:SE)は,てんかん発作が自然に停止せず持続する,あるいは意識回復を伴わず反復する状態である1)。発作が長時間持続すると,脳内の抑制機構が破綻し,抗てんかん発作薬の効果も低下するため,発作はさらに停止しにくくなり,神経障害を生じやすくなるという悪循環に陥ってしまう。さらに,小児では抑制性神経伝達機構が発達途上にあるため,成人よりも発作が遷延しやすい。

SEの定義は,2015年に国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)が発表したものが広く用いられている2)。SEを2つの時間軸(t1,t2)で定義しており,t1は「自然停止しにくくなり,治療開始を考慮すべき時間」,t2は「長期後遺症のリスクが高まる時間」を示す(図1)。さらに,けいれん性てんかん重積状態(convulsive status epilepticus:CSE)と,非けいれん性てんかん重積状態(nonconvulsive status epilepticus:NCSE)に大別される。CSEでは,t1は5分,t2は30分と定義される。一方,NCSEのうち,焦点意識減損発作重積状態(focal status with impairment of consciousness)では,t1は10分,t2は60分以上,欠神発作重積状態(absence status epilepticus)ではt1は10〜15分であり,t2は現時点で明確には定義されていない。

望まれる病院前治療の普及
けいれん性てんかん重積状態(CSE)では,発作の開始から5分で治療開始することが望ましい。しかし,救急搬送により病院に到着するまでには30分以上を要することが多い。よって,病院前治療の普及が望まれる。日本では,救急隊員による抗てんかん発作薬投与は認められておらず,事前に処方を受けた患者において,保護者等が投与する場合にのみ病院前治療が可能である。

❷ てんかん重積状態の多様な背景疾患

SEの原因は,「てんかん」だけではない。むしろ,様々な背景疾患を基盤として発症する(表1)。したがって,SEは病名として扱われることもあるが,実際には多様な原因疾患によって引き起こされる「症候群」として理解することが重要である。

診療実践において,最も重要なのは急性症候性発作(acute symptomatic seizure)を鑑別・除外することである。特に小児では,急性脳炎・脳症,髄膜炎,低血糖,電解質異常,中毒など,迅速な診断と治療介入を要する病態が少なくない。発熱,意識障害,局所神経症状などを伴う場合には,単なる「熱性けいれん」や「既知のてんかん」と決めつけず,背景疾患を積極的に検索する必要がある。

一方で,脳形成異常や低酸素性虚血性脳症による後遺症などの遠隔症候性(remote symptomatic)の場合,既往歴や発達歴,神経画像所見が重要な手がかりとなる。また,ミトコンドリア病や神経変性疾患,自己免疫疾患などの進行性疾患(progressive)では,難治性てんかん重積状態(refractory status epilepticus:RSE)として発症することがあり,発達退行,多臓器症状,精神症状などを伴う場合には注意が必要である。脳腫瘍や自己免疫性脳炎では徐々に症状が進行することがある。しかしながら,経過中に急速に増悪することもあるため,徐々に症状が進行する段階での鑑別が望ましい。さらに,小児では熱性けいれん(熱性発作)やDravet症候群など,脳波臨床症候群(electroclinical syndromes)に関連したSEの頻度が高い。特に乳幼児では,発熱や感染を契機としてSEに至ることが多い。

加えて,背景疾患は年齢によって大きく異なる点も重要である(表2)。乳児では急性症候性発作の鑑別は特に重要である。特に,生後3カ月未満は熱性けいれんの好発年齢ではないため,発熱の有無にかかわらず広く原因検索を行う必要がある。幼児では熱性けいれん(熱性発作)や急性脳症,学童では既知のてんかんや自己免疫性脳炎の頻度が高くなる。成人では脳血管障害が重要な原因となるほか,中毒や低血糖症も念頭に置く必要がある。脳腫瘍は年齢にかかわらず一定の頻度でSEの原因となる疾患である。

❸ 初期対応のポイント

(1) 病院到着直後に,まず何をするか?

SEの診療は「Time matters(時間が重要だ)」である(図2)。まず「迅速に発作を止めること」が優先される。特にCSEでは,時間経過とともに発作は停止しにくくなり,神経障害のリスクも高まる。そのため,時間を意識した初期対応がきわめて重要である。しかしながら,実際の救急診療では,「発作対応」「呼吸循環管理」「原因検索」が同時並行で進行する。その結果,初療現場では混乱しやすく,「まず何を優先するか」を整理しておく必要がある。

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