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日本全国で手足口病の流行が拡大[感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー(50)]

登録日: 2026.08.20 最終更新日: 2026.08.20

石金正裕 (国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

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●手足口病とは1)2)

手足口病(hand, foot and mouth disease:HFMD)は,口腔粘膜,手のひら,足の裏や足背などに水疱性発疹を認める急性ウイルス感染症です。主な原因ウイルスは,コクサッキーウイルスA6型(CA6),A16型(CA16),エンテロウイルス71型(EV71)などのエンテロウイルスで,主として乳幼児を中心に夏季に流行します。患者の多くは4歳頃までの小児で,特に2歳以下が多いとされています。

感染経路は,咳やくしゃみなどによる飛沫感染,ウイルスが付着した手や物品を介する接触感染,便中に排泄されたウイルスが口に入る経口感染(糞口感染)などです。潜伏期間は一般的に3~5日で,その後,口腔内や手足を中心に2~3mm程度の水疱性発疹が出現します。発熱を認める患者は約1/3ですが,多くは38℃以下の軽度の発熱にとどまり,通常は3~7日程度で自然に軽快します。基本的には予後良好ですが,稀に髄膜炎,脳炎,急性弛緩性麻痺,神経原性肺水腫,心肺機能不全などを合併することがあります。特にEV71による感染では,中枢神経系合併症に注意が必要です。また,CA6によるHFMDでは,発疹が広い範囲に出現したり,発症から数週間後に爪が脱落する爪甲脱落症を認めたりする場合があります。

特異的な抗ウイルス薬や国内で使用できるワクチンはなく,治療は水分補給などの対症療法が中心です。口腔内の痛みにより飲食が難しくなることがあるため,刺激の少ない食事や少量頻回の水分摂取が重要です。

日本では,感染症法に基づく五類感染症の小児科定点把握疾患に指定されています。

●日本全国でHFMDの流行が拡大1)2)

2026年,日本では例年と同様に第20週頃からHFMD の患者報告が増加しています。第20週の定点当たり報告数は0.65(1477例)でしたが,第26週には4.61(1万396例)まで増加しました。2025年は年間を通じて比較的低調で,定点当たり報告数の最大値は0.63でした。このように,2026年は前年を大幅に上回るペースで流行が拡大しています。

東京都では患者報告数が2年ぶりに警報基準を超え,全国的にも乳幼児を中心とした感染拡大が報じられています。2026年7月1日までの時点で患者から多く検出されているウイルスはCA6とEV71です。CA6では典型的な手足以外にも発疹が広がることがあり,今後の病原体動向にも注意が必要です。

HFMDでは,症状が改善した後も便中に2~4週間程度ウイルスが排泄されることがあります。そのため,登園・登校を一律に制限するだけでは流行を防ぐことは困難です。予防の基本は,流水と石けんによる丁寧な手洗い,排便後やおむつ交換後の手指衛生,タオルや食器の共用を避けること,玩具や頻繁に触れる場所などを清潔に保つことです。特に保育施設や家庭では,おむつを交換した後の手洗いを徹底する必要があります。アルコール消毒だけに頼らず,物理的な手洗いを組み合わせることが重要です。

2024年には夏と秋の二峰性の流行が確認されました。2026年も夏季のピークを過ぎた後まで,継続して発生動向を注視する必要があります。

【文献】

1) 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト:手足口病・ヘルパンギーナ 2026年第1~26週(2026年7月1日現在).(2026年7月20日アクセス)

2) 日テレNEWS:全国で手足口病が大流行,東京は2年ぶりの警報レベル.(2026年7月20日アクセス)

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。


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