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FOCUS:スマートウォッチで「心房細動」と表示あり! 外来対応の実践ガイド

登録日: 2026.08.14 最終更新日: 2026.08.14

妹尾恵太郎 (京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科不整脈先進医療学講座准教授)

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京都府立医科大学大学院医学研究科循環器内科不整脈先進医療学講座准教授
妹尾恵太郎
2006年滋賀医科大学卒業。循環器内科医として研鑽を積み,英国留学を経て,2018年より京都府立医科大学で勤務。2023年より現職。不整脈専門医として臨床および研究活動を行っている。主な執筆歴として,『循環器ジャーナル』特集「心房細動 予防・早期発見・治療の進化」(医学書院,2024年),『今さら聞けない心電図 改訂第2版』(メジカルビュー社,2022年)などがある。現在はAI医療機器開発に取り組んでいる。
私が伝えたいこと
◉スマートウォッチの心房細動(AF)通知は「AF診断」を意味しない─通知はあくまで受診勧奨の入り口である。
◉光電式容積脈波(PPG)通知の陽性的中率(PPV)は84~98%と幅がある─アルゴリズムの違いが大きく,単純比較はできない。
◉確定診断には「30秒以上持続するAFの心電図(ECG)記録」が必要─スマートウォッチ通知のみではこの基準を満たさない。
◉通知後の初診では「12誘導ECG+問診」から始め,必要に応じてホルターECGやパッチ型ECGを検討する。
◉サブクリニカルAF全例に対する抗凝固療法は出血リスクを増加させるため,注意が必要である。
◉日本人には独自のリスク評価法(HELT-E₂S₂)があり,欧米のCHA₂DS₂-VAScスコアよりも日本人の特性を反映しやすい。
◉開業医に必要なカルテ記載の原則は,「通知の根拠の記録」「未確定である旨の明示」「次のアクションの明文化」である。
◉患者教育では,「通知=心房細動の可能性があること」「症状がなくても受診が大切であること」の2点を繰り返し伝える。

❶ はじめに ─「ガイドラインと現場の深刻なギャップ」という構造的課題

スマートウォッチで「心房細動(atrial fibrillation:AF)の通知」や「不規則な心拍の通知」を受けた患者が,それを受診の入り口として来院することが増えてきた。しかし,その通知は診断書ではなく,ガイドラインが規定する「診断基準」や「抗凝固療法開始基準」を満たすものでもない。このガイドラインと現場の深刻なギャップを理解した上で,どのように受診対応し,確定診断をくだしていくのか。それが本稿のテーマである。

AFは高齢社会における代表的な不整脈であり,虚血性脳卒中の危険因子である。AF関連脳卒中は他の原因による脳卒中より重症化しやすく,未診断AFの初発症状が脳卒中である症例も少なくない12。短時間の12誘導心電図(electrocardiogram:ECG)だけでは発作性AFをとらえきれないことが従来の課題であった。

そこに登場したのが,消費者向けスマートウォッチである。光電式容積脈波(photoplethysmography:PPG)による不規則脈波通知と30秒単誘導ECG機能を搭載し,日常生活下での長期モニタリングを可能にした。さらに,医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)の承認も相まって,「スマートウォッチで心房細動の疑いがあると言われた」という患者が,かかりつけ医や内科外来を受診する機会は確実に増えている。

しかし,ここに深刻な構造的課題がある。スマートウォッチの通知はあくまで「受診のきっかけ」であり,「AF診断」ではない。「2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療」が定めるAF診断基準は「12誘導ECGまたは単誘導ECGで30秒以上持続するAFを確認すること」1であり,抗凝固療法の開始基準とも一致しない。したがって,通知を契機に受診した患者に対し,「どこまで検査を行うか」「カルテに何を記載するか」「いつ直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC)を開始するか」について,現場の判断を支える実践的指針が求められている。

本稿では,

①各社製品の機能の理解,

②受診から確定診断までの診療導線,

③ガイドラインとリアルのギャップへの実践的対処,

④実際のカルテ記載,

⑤抗凝固療法判断の原則,

について具体的な症例やpitfall,tipsを交えて解説する。

❷ 日本国内で案内されているスマートウォッチのAF関連機能

(1) 日本国内で案内されている3社製品の共通点

2026年7月現在,日本国内でAF関連機能の公式案内が確認できるスマートウォッチは,Apple,Fitbit(Google傘下),Huaweiの3社製品である(13)~10

3社に共通するのは,これらの機能が「AFの確定診断ではなく,受診を促す入り口として位置づけられている」点であり,各社とも,「陰性結果はAFを否定するものではない」「確定診断は医師が行う」ことを明示している。

PPG通知≠AFの診断確定
PPG通知はAFの診断確定ではない。医師がこれを忘れると,「確定診断前DOAC処方」という法的・医療的リスクにつながる。

(2) 光電式容積脈波(PPG)通知の仕組みと各社の違い

PPGは,手首の皮膚に照射した光の反射変化から脈拍間隔を推定し,その不規則性からAFを疑う技術である11。一方,ECGのように心筋の電気活動を直接記録するものではないため,心房期外収縮(premature atrial contraction:PAC)や心室期外収縮(premature ventricular contraction:PVC),洞性不整脈,さらには体動アーチファクトなども「不規則脈波」として検出されうる点に注意が必要である(23)~10

カルテへの正確な記録
「Apple Watchに心房細動と言われた」という患者の訴えをそのままカルテに記載しない─「PPG不規則脈波通知があった」と正確に記録する。
通知なし≠AF陰性
発作性AFは本質的に間欠性であり,発作間欠期には洞調律に戻るため,モニタリング中に通知がなくてもAFを否定できない。

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