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更年期のホットフラッシュ×加味逍遙散[漢方スッキリ方程式(113)]

登録日: 2026.08.05 最終更新日: 2026.08.05

佐藤美紀 (吉野川医療センター産婦人科部長)

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更年期とは,わが国では閉経の前後5年の合計10年間とされ,この時期に現れる多種多様な症状の中で,日常生活に支障をきたす場合に更年期障害と定義されている1)。症状は,①顔のほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)・発汗などの血管運動神経症状,②易疲労感・めまい・動悸・頭痛・肩こり・腰痛・関節痛・足腰の冷えなどの身体症状,③不眠・イライラ・不安感・抑うつ気分などの精神神経症状から構成される。

更年期障害の主たる原因は卵巣機能の低下であるが,これに加齢に伴う身体的変化,精神・心理的な要因,社会文化的な環境因子などが複合的に影響することにより症状が発現すると考えられている1)。多種多様な症状を訴えるのが更年期障害の特徴である。

イライラなどを伴う症状に有効

治療としては,ホルモン補充療法を選択する場合もあるが,漢方薬の出番もとても多い。加味逍遙散は,更年期障害に頻用される処方で,虚証で不安・不眠・イライラなどの精神神経症状を伴いホットフラッシュを訴える場合に効果が得られやすい。江戸後期の医師百々漢陰は「婦人いっさいの申し分に用いてよくきく。いまより十数年前は,世間の医者は,婦人の病というとほとんどこの方を用いた。男子でも癇癪持ちに適する」と述べており,昔から女性の様々な愁訴に用いられていたことがわかる。

加味逍遙散の「逍遙」とは,そこここをぶらぶら歩くという意味である。処方名の通り,更年期の症状は逍遙するので,注意が必要である。1つの症状が改善しても別の症状を訴えるので,患者さんの訴えを聞いているだけでは症状が改善しているのかどうかの判断が難しい。来院のたびに「のぼせは?」「イライラは?」「睡眠は?」と細かく尋ねると,案外症状が改善していることも多い。2~4週間内服しても全く症状の改善がなければ,処方の変更を考える。また加味逍遙散に含まれている山梔子・牡丹皮は清熱作用のある生薬だが,胃部不快感が生じる可能性があるため,胃が弱い場合は,食後に内服してもらうとよい。

鑑別処方としては,やや実証でホットフラッシュの訴えはあるが,精神神経症状の訴えのない場合は桂枝茯苓丸を用いる。虚証でホットフラッシュはなく,冷え・むくみ・倦怠感を訴える場合は当帰芍薬散を用いる。虚証でイライラなどの神経興奮症状が強く,やや攻撃的な場合は抑肝散を用いるが,もともと胃が弱い人には,胃薬である陳皮と半夏が加味された抑肝散加陳皮半夏のほうが喜ばれる。抑肝散抑肝散加陳皮半夏は,月経前症候群(PMS)や産後のイライラにも効果がある。PMSに用いる場合は,月経前の症状が出やすい時期に内服するだけでも効果が得られる。


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