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前立腺癌─早期発見と治療:その進歩[J-CLEAR通信(190)]

登録日: 2026.08.03 最終更新日: 2026.08.03

中井 靖 (奈良県立医科大学泌尿器科学教室講師)

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1 はじめに

前立腺癌は,わが国において男性の部位別がん罹患数第1位,死亡数第6位(2021年全国がん登録および人口動態統計)と報告されている1)。高齢化の進行に伴い,今後も罹患数の増加が予測される。前立腺癌は早期発見により治癒が期待される一方,臨床的に無害な低リスクがんも存在し,過剰診断や過剰治療が課題となっている。

本稿では,前立腺特異抗原(prostate-specific antigen:PSA)検診を中心に,早期診断の現状と課題,新たな補助指標,最新治療動向について概説する。

2 PSA検診の現状と意義

PSA検診は1990年代からわが国の一部の自治体で導入され,早期発見に寄与してきた。当初は直腸診(digital rectal examination:DRE)や経直腸超音波との併用が一般的だったが,現在は一次検診においてPSA検診単独が主流であり,結果に基づき精密検査を行うことが多い。

欧州のERSPC試験2)では,PSAスクリーニングにより前立腺癌死亡率が約21%(相対リスク)低下したことが報告され,非遵守や汚染(PSA検査が広く行われていた)を補正した解析では最大30%の低下が示されている。一方,米国のPLCO試験3)では有意差は認められなかったが,対照群でも汚染があったため,純粋な未検診群との比較ではなかったことが指摘されている。

進行の遅い低リスク前立腺癌の過剰診断・過剰治療を避けるため,年齢,全身状態,余命(一般的に10年以上)を考慮した選択的実施が推奨される。また,近年は共同意思決定(shared decision making:SDM)が重視され,医師と患者が科学的根拠や検査の利点・欠点を共有し,患者の価値観に基づき実施可否を判断することが推奨されている。

3 国際ガイドラインとわが国の現状

わが国ではPSA検診受診率が低く,実施年齢基準も統一されていない。欧州泌尿器科学会(European Association of Urology:EAU)ガイドライン4)では,一般男性は50歳から,家族歴を有する男性およびアフリカ系男性は45歳から,BRCA2遺伝子変異保有者は40歳からPSA検診を検討するとされている。また,PSA<1.0ng/mLは5年以上経過してからの,1.0~3.0ng/mLは2〜4年ごとのPSA検診を,>3.0ng/mLや高リスク例は精査を推奨している。さらに,EAUガイドライン4)では,PSA 3~10ng/mLの場合には4週間後に再検査し,数値が正常化していれば1年後に再検査,という戦略が追加された。70歳以上や余命10年未満では,原則として検診は推奨されない。なお,40〜50歳時のベースラインPSA測定により,将来のリスク予測も可能とされている。

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