異なる業種や領域間で、従来の枠組みにとらわれず互いに接点を持ち、課題解決や価値創出を図ろうとする取り組みは、近年さまざまな分野で選択肢の1つとして認識されつつある。医療・介護分野においても、人材不足や地域包括ケアの重要性の高まりを背景に、こうした異業種間連携の動きが一部で意識されるようになっている。
今回はその一例としてSAITO MEDICAL GROUP(以下SMGR)の取り組みを紹介する。SMGRは2026年3月31日、学校法人新潟福祉医療学園との事業承継(以下を承継)を決定した。同グループは全国各地で医療・介護・福祉事業との承継を進めながら事業を拡大してきたが、学校法人との承継は今回が初めてとなる。

事業の「自給自足」で医療の持続を目ざす
承継の背景にあるのは、SMGRが掲げる「自給自足」の経営構想だ。
代表の齋藤浩記氏は、医療業界が抱える課題の一つとして、「病気があって初めて成り立つ事業のあり方」に以前から違和感を抱いてきた。医療は本来、人々が健康な人生を送り、最期までその人らしく生きられる社会を支えるために存在すると語る齋藤代表。しかし、医療機関の経営は診療報酬制度への依存度が高く、「手術件数や診療実績といった指標が経営の重要なKPIとなる側面」について、こうした仕組みでは医療本来の価値と経営の方向性に乖離が生じかねないと指摘した。その課題を乗り越えるため、SMGRでは医療・介護を軸に関連事業が相互に支え合う「自給自足」の実現を掲げてきた。
その構想の中で、教育は単なる人材確保の手段ではなく、医療の未来を支える重要な基盤として位置づけられている。教育事業への取り組みは、齋藤代表が以前から温めてきた構想の1つでもあり、今回の承継はその考えを形にする第一歩となった。
医療・介護分野において、最後は人が支える仕事であり、人が育たなければ業界は発展しないと語る齋藤代表。学生を育て、医療・介護の現場で経験を積み、その経験や知見を次の世代へと受け継いでいく。教育と医療が相互に価値を高め合う循環を生み出すことは、「自給自足」を実現する上で重要な考え方である。

理念の一致が導いた学校法人との承継
今回承継した新潟福祉医療学園は、1996年の開学以来、看護や介護、保育分野を中心に人材を育成してきた学校法人だ。井口明彦理事長は約20年にわたり学校経営を担い、赤字経営からの再建や看護学科の新設を進めるなど、教育体制の充実を図ってきた。近年は少子化による学生募集の課題に直面する中、従来の学校運営だけでは実現できない新たな価値の創出を模索していた。
両法人が初めて面談したのは約1年前。互いの構想を語り合う中で、双方が掲げる理念や社会課題の解決を目指す方向性が一致したことから、今回の承継が実現した。承継を支えたのは株式会社fundbookヘルスケアビジネス戦略本部 部長の西山賢太氏。SMGRと新潟福祉医療学園の双方と関わりを持つ中で、両法人の理念や将来構想を丁寧にすり合わせながら関係構築を支援し、今回の承継実現を後押しした。

理念を形にする第一歩
少子化や社会構造の変化が進む中、両者の根底にある「人を育て、地域を支える」という理念を礎に生まれた今回の承継は、単なる組織間の連携にとどまらず、教育と医療が一体となって持続可能な地域社会を支える新たなモデルへの挑戦といえる。育成した人材が医療・介護の現場で経験を積み、その経験が次世代の育成へとつながっていく。そうした持続的な循環を通じて、地域医療にどのような価値をもたらしていくのか。今後の展開に期待が寄せられる。

お問い合わせ
●株式会社fundbook
https://fundbook.co.jp/corporate/
●SAITO MEDICAL GROUP
https://smgr.jp/
●看護リハビリ新潟保健医療専門学校
https://www.hi-college.ac.jp
●日本こども福祉専門学校
https://nifis.jp
●ニフィスこども園
https://nifis-kodomoen.jp