東京都医師会は7月14日の定例記者会見で、今冬に向けたワクチン接種の推進について説明した。尾﨑治夫会長は、高齢者の疾病負担が一層増加することを見据え、地域で高齢者を支える医療体制の構築とともに、予防医療の重要性を強調。2030年頃までに「病気になる前から地域で支える医療」への転換を目指し、予防医療を推進していく方針を示した。
都医が重点施策に掲げる予防医療の柱の1つとして挙げられたのがワクチン接種の推進だ。尾﨑会長はワクチンについて「重症化を予防する」ことが重要な役割であり、その正しい理解が医療提供体制や社会機能の維持につながると明言。ワクチン接種を推進するためには、国民一人ひとりのワクチンリテラシーの向上が不可欠であると指摘した。SNSなどを通じてさまざまな情報が流通する中、科学的根拠にもとづく正確な情報を発信し、ワクチン接種について適切な判断ができる環境を整備していく考えを示した。
今冬に備えワクチン接種の推奨をする尾﨑治夫会長
経鼻ワクチンの導入で小児の接種選択肢が拡大
小児インフルエンザ感染症について説明した首里京子疾病対策担当理事は、昨シーズン(2025年~2026年)は11月と2月に流行のピークが見られ、背景に手洗いやマスク着用などの感染症予防策に対する意識の希薄化が考えられると指摘した。
首里氏はインフルエンザワクチンを巡るトピックとして、2024年から国内で導入された経鼻弱毒性インフルエンザワクチンを紹介。経鼻投与により痛みを大幅に軽減できる点が大きな利点であると説明した。また、従来の注射ワクチンでは2度の接種が必要である一方、経鼻ワクチンは1度の接種で完了する点も特徴として挙げ、小児インフルエンザワクチンの選択肢が増えることで接種率の向上に期待を寄せた。
小児のインフルエンザ感染症対策について話す首里京子理事
自治体間格差の解消と高齢者施設への接種支援を提言
平川博之副会長は新型コロナウイルスについて、流行が落ち着いた現在も高齢者にとって入院や死亡につながるリスクの高い感染症であり、継続した対策が不可欠であるとの認識を示した。新型コロナウイルスワクチンはインフルエンザワクチンと同様にB類疾病の定期接種に位置づけられたものの、接種率はインフルエンザを下回る現状にあると指摘。その背景には自治体ごとで異なる自己負担額や、接種推奨の通知方法の違いがあると述べた。基礎疾患を複数抱える高齢者において、自己負担が接種や治療をためらう一因となり得ることから、高齢者施設の入所者・通所者については経済的負担を軽減し、ワクチンや治療薬へアクセスしやすい環境を整備する必要があるとの考えを示した。
高齢者施設における新型コロナワクチン接種の必要性を話す平川博之副会長