年1回くらいは経験するけれども,いざ出会ったときに困る症例を共有!
症例 高齢男性
●病歴
• 冠動脈バイパス術,うっ血性心不全,高血圧,脂質異常症,慢性腎臓病,慢性心房細動の既往がある。79歳時に,左前大脳動脈(anterior cerebral artery:ACA)領域の心原性脳塞栓症を発症し,エドキサバン30mg/日を内服していた。
• 82歳時に右内頸動脈(internal carotid artery:ICA)起発部高度狭窄によるアテローム血栓性脳梗塞を発症し,緊急で右頸動脈ステント留置術(CAS)を行った。エドキサバン30mg/日にアスピリン100mg/日およびクロピドグレル75mg/日を併用し,modified Rankin Scale(mRS)1で自宅退院した。
• ステント再狭窄や血栓は認めなかったため,83歳時にはエドキサバン30mg/日の単剤内服となっていたが,左半球に脳梗塞を再発した(図1a矢印,b矢頭)。左ICA起始部に有意狭窄を呈さないプラークはあるものの,心房細動以外に高リスク塞栓源を認めなかった。1カ月後に左心耳閉鎖術(WATCHMAN FLXTM Pro 40mm)を行いエドキサバンを終了し,アスピリン100mg/日およびクロピドグレル75mg/日を継続した。
• 左心耳閉鎖術の4カ月後,右ACA-中大脳動脈(MCA)境界領域に無症候性脳梗塞の増加を認めた(図1c矢印)。D-dimerが8.4μg/mLに上昇していたことから,閉鎖した左心耳付近からの塞栓症を疑い,アスピリンを中止してエドキサバン15mg/日とクロピドグ レル50mg/日を併用したところD-dimerは低下した。しかし,薬疹を発症し,クロピドグレルが被疑薬と判断された。CAS後経過に問題はなかったため,クロピドグレルを中止してエドキサバン30mg/日の単剤内服とした。
• 84歳時に右ACA-MCA境界領域および左MCA領域に脳梗塞を再発した(図1d矢印,e矢頭)。頭蓋内MRAで右ACA A1を認めず(図1f),右ACAは左ICA灌流領域であった。以前から左ICA起始部にプラークを認めていたが,T1強調像高信号,T2強調像等信号を呈していたことから不安定プラークと考え,今回の塞栓源と推定した(図2)。NASCET 50%未満の軽度狭窄であることから外科的治療は見送り,エドキサバンを15mg/日に減量し,アスピリン100mg/日の併用を開始した。その後,D-dimerの再上昇や脳梗塞の再発は認めていない。両上肢の巧緻運動障害が残存しているためmRS 2であるが,ADLは自立しており外来に通院している。


