一般社団法人建設ヘルステック協会は、KDDI株式会社、株式会社アカサカテックと連携し、通信環境が極めて過酷な建設現場でも利用可能な遠隔医療サービスを2026年7月23日より全国展開すると発表した。同協会は昨年6月からスマートフォンを用いたオンライン診療サービスを提供してきたが、今回の取り組みでは、衛星通信を活用することで、より厳しい通信条件下でも安定した医療支援を受けられる体制を整備する。
協会によると、携帯電話の「人口カバー率」は99%に達する一方、山林や僻地を含む「面積カバー率」は約60%にとどまる。通信の空白地帯では建設従事者が医療アクセスから孤立するリスクがあり、KDDIが提供するスペースX社の衛星通信「STARLINK(スターリンク)」と、アカサカテックのGPS・ハードウェア技術を組み合わせることで、遠隔地でも安定したオンライン診療を可能にするものだという。
同協会のオンライン診療システムは、医師不足や過疎化が進む地域の企業からも関心を集め、山形県や岩手県などで導入が進むほか、富山県の立山砂防工事でも活用されている。
今回発表された新サービスでは、オンライン診療や薬剤師による服薬指導に加え、処方薬の郵送受け取りにも対応する。建設現場事務所での受け取りも可能で、医療機関が少ない地域に滞在する作業員の健康管理を支援する仕組みとして位置づけられている。また、建設現場ではフィリピンやベトナムを中心とした外国人労働者が増加している現状を踏まえ、字幕表示による多言語対応(英語・ベトナム語)も予定されている。言語の壁による受診遅れを防ぎ、外国籍作業員の安全確保につなげる狙いがある。
協会は、今回の取り組みを「建設現場の医療アクセス改善」にとどまらず、地域医療の偏在を緩和する新たな手段としても活用したいとの考えだ。中山間地域や離島、過疎地では医療機関や医師数が限られ、受診までの距離や時間が大きな負担となるケースが多いことから、協会関係者は遠隔医療サービスを地域のクリニックと連携させることで必要な場所に医療が届く仕組みを整えることを目指している。
協会はサービス展開を段階的に進めており、ステップ1をオンライン診療、ステップ2を健康診断支援、ステップ3を食事管理サービスと定義。今回の取り組みはステップ1に当たる。建設業界では、遠方現場での宿泊を伴う勤務形態や身体的負荷の大きさから、健康管理の効率化が長年の課題とされてきた。衛星通信を活用した今回のサービスが、通信困難地域における医療アクセス改善と地域医療の偏在是正にどのように寄与するか、今後の展開が注目される。