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PPI増量の前に!治らない胸やけに「4つの基本ステップ」

登録日: 2026.06.26 最終更新日: 2026.06.29

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難治性GERD診療では,ガイドラインが推奨する食道インピーダンス・pH検査などの精密検査は重要である。しかし,一般外来では必ずしも実施可能とは限らない。検査設備の限られた診療所や中小病院においては,「次に何を考え,どう動くか」という思考プロセスこそが診療の質を左右する。

外来で難治例を診る際には,以下のStep 0~3で整理すると実践的である。Step 0は治療全体を通じて並行して実践し,Step 1以降は順に進めていくことを前提とした構成である。

外来対応の思考プロセス
Step 0:生活習慣指導を並行して実践する
Step 1:本当に治療抵抗性かを見きわめる
Step 2:GERD以外の疾患を除外する
Step 3:酸か,酸以外かを切りわける
▶Step 0は治療全体を通じて並行して実践し,Step 1以降は順に進める。

(1) Step 0:生活習慣指導を並行して実践する

難治性GERDに対する外来対応では,生活習慣指導をすべての治療段階で並行して行うことが基本となる。薬物治療に加えて生活習慣指導を適切に組み合わせることで,症状改善が期待できる。ランダム化比較試験では,肥満者に対する減量,喫煙者への禁煙指導,夜間症状のある患者に対する遅い夕食の回避,就寝時の頭位挙上が有効とされている4。また前向きコホート研究では,睡眠中の体位を詳細に解析した結果,右側臥位や仰臥位に比べて,左側臥位では食道の酸曝露時間が有意に短縮することが示されている5

生活習慣指導
•肥満者に対する減量
•喫煙者への禁煙指導
•夜間症状のある患者に対する遅い夕食の回避
•就寝時の頭位挙上
•睡眠中の左側臥位

(2) Step 1:本当に治療抵抗性かを見きわめる

まず確認すべきは,薬剤が適切に使用されているかどうかである。外来で「PPIが効かない」と訴える患者の中には,内服タイミングや服薬状況の問題により,十分な治療効果が得られていない例が少なくない。さらに,服薬方法を一工夫することが有効な場合もある。

PPI抵抗性症例では,まず服薬方法を再確認する。PPIは食後に活性化されるプロトンポンプを標的とするため,食前投与が有効となる。加えて半減期が短いため,倍量1回投与よりも2回分割投与で血中濃度を維持することが有効な場合がある6。また,重症例では,初期治療としてP-CABの4週間投与が第一選択として提案されている。

この段階では,薬剤を変更・追加する前に,服薬方法,投与期間,薬剤選択の妥当性を丁寧に見直すことが重要である。

治療抵抗性の見きわめのポイント
•内服アドヒアランス
•投与期間(PPIは8週,P-CABは4週)
•服薬のタイミング
•重症度に応じた薬剤選択

(3) Step 2:GERD以外の疾患を除外する

次に重要なのは鑑別である。胸やけや呑酸はGERDに典型的な症状であるが,嚥下障害,つかえ感,体重減少などを伴う場合には他疾患を疑うべきである。

胸やけに加えて,

•嚥下障害

•つかえ感

•胸痛

•体重減少

を認める場合は,単純なGERDではなく,食道カンジダ症,好酸球性食道炎,食道アカラシア,びまん性食道痙攣症,食道癌・バレット食道腺癌などを鑑別に挙げる必要がある。特に好酸球性食道炎は近年増加しており,PPI抵抗性症例の鑑別として重要である。

また,免疫抑制状態では食道カンジダ症も念頭に置くべきである。これらは内視鏡検査で診断可能であり,難治例では積極的な内視鏡評価が望ましい。

胸やけに加えて上記のアラーム症状がみられた場合には,速やかに専門施設への紹介を検討することが,漫然とした薬物投与を避ける実践的な対応となる。

内視鏡検査の適応
何か気になるときには内視鏡検査を行う。特に嚥下障害,つかえ感,体重減少,貧血などのアラーム症状を認める場合や,中高年での新規発症例,PPI抵抗例では内視鏡評価を検討する。症状や経過に違和感があれば,躊躇せず内視鏡検査を行うことが重要である。

(4) Step 3:酸か,酸以外かを切りわける

P-CABはきわめて強力な酸分泌抑制薬である。これを適切に使用しても症状が持続する場合,病態は「酸」以外にある可能性を考える段階に入る。

すなわち,

•非酸逆流

•機能性胸やけ

を鑑別に挙げる。

これらの評価には食道インピーダンス・pH検査や食道内圧検査が有用であるが,一般外来で実施できる施設は限られている。そのため,P-CAB抵抗性が確認された時点が,専門施設での病態評価を検討する1つのタイミングとなる。

外来では消化管運動機能改善薬や漢方薬などを試みることもあるが,その場合も「4~8週で胸やけの改善が得られなければ次へ進む」という出口戦略を明確にしておくことが重要である。

非酸逆流とは
非酸逆流とは,胃酸以外の液体や空気が食道に逆流することで症状が起こる状態を指す。NERDの症状を引き起こす要因の1つである。
※この記事は,FOCUS『難治性GERDの診かた・考えかた 〈外来で役立つ実践的アプローチ〉』の一部を抜粋・編集したものです。
本編では,本記事の内容に加えて,「PPI以外の治療アプローチ」や「他疾患との鑑別・紹介のタイミング」,さらに外来でそのまま使える「実際の患者説明の文例」なども詳しく掲載しています。
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