今回は,当院の失敗談から始まった,新人教育の改善の取り組みのお話です。このような連載を続けていると,当院の教育は万全だと思われるかもしれませんが,当院にも,うまくいかないことや失敗の経験は山ほどあります。その中でどのような試行錯誤をしているかを共有することで,読者の皆さんのクリニックでの新人教育に生かして頂ければと思います。
「できているはずなのに辞めてしまう」違和感から始まった見直し
(1)順調に思えた新人教育
新人の教育をしていて,「しっかり教えていたのに辞めてしまった」という経験をされたことが,皆さんのクリニックでも一度はあるのではないでしょうか。当院でも,現在進行形で,新人教育のあり方を見直しています。そのきっかけになったのは,新人のAさんが,一見すると問題はなさそうなのに,実は大きな不安を抱えていたというケースでした。
当院では,教育担当制を取り入れています。主担当が1名,副担当は同じ職種全員という設定で,それぞれに手当がつきます。この制度のもと,新人スタッフに対して,ベテランスタッフが横につき,一つひとつ丁寧に指導します。Aさんも業務を徐々に覚えており,私から見れば「順調に育っている」と感じられる状態でした。実際,周囲から見ても特に問題はなく,安心して,任せられる仕事を担当してもらっていました。そんなAさんが,結婚で遠方へ転居することになり,この春退職しました。辞める半年くらい前に伝えてくれて,お祝いをして,円満退職をしたと思っていました。
しかし,Aさんの退職後に別のスタッフから話を聞いて,状況の見え方が大きく変わりました。Aさんは「自分がちゃんとできているのかわからなかった」「明日,仕事ができるか不安で,朝を迎えるのが怖かった」という状態で,結婚が退職の良いきっかけになっていたのです。正直に言うと,私は,すぐには理解できませんでした。こちらから見れば,業務は問題なく進んでおり,大きなミスもなく,むしろ順調に成長しているように思えていたからです。ただ,この出来事をきっかけに,「自分たちは何を見て評価していたのか」ということを改めて考え直すようになりました。