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在宅医療における医療従事者の安全確保[先生、ご存知ですか(100)]

登録日: 2026.06.28 最終更新日: 2026.06.28

一杉正仁 (滋賀医科大学社会医学講座教授)

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患者宅で奪われた医師の命

2022年の1月に、埼玉県内で訪問診療を行っていた医療従事者が患者の家族に襲われ、医師が射殺されました。その翌年にも、訪問診療を行っていた医師と看護師が患者に監禁されるという事件が起きました。

訪問診療では患者宅を訪れるため、事前にどのような環境かわからない場合もあり、危険が潜んでいます。また、密室であることから、医療従事者がハラスメントに遭遇しやすい状況にあります。

在宅医療のニーズ拡大と安全確保の重要性

一方で、高齢人口の増加に伴って、「住み慣れた地域や自宅で療養したい」というニーズが高まっています。国も在宅医療の充実を目標としており、直近の診療報酬改定でも、在宅医療での重症者への対応や24時間対応への評価が手厚くなっています。このような状況の中で、在宅医療において最も重要なのは、医療従事者の安全が確保されることです。

40%の医師が身の危険を経験

前述の事件以降に、訪問診療を行う医師を対象にした調査が行われました。その結果、40%の医師が過去に身の危険を感じた経験があり、5%の医師は毎年そのような経験をしていたそうです。

具体的な内容としては、「暴言を浴びせられる・怒鳴られる」が30%と最も高く、ついで「ハサミや刃物などによる脅し・暴力行為」が18%、「身体的暴力」が16%、「長時間の軟禁」が9%、「脅迫電話」が5%と続きました。以前から、訪問看護師や介護士に対するハラスメントは認識されていましたが、医師も例外ではないことがわかりました。

一般的に、在宅医療や介護の現場で暴力やハラスメントを経験したことがある割合は、全職種を通して50~65%程度と言われています。したがって在宅医療では、こうした状況に遭遇することを念頭に置いて、準備をしなければなりません。

「通報はわずか1件」という現実

2022年から2023年にかけて、在宅医療スタッフを対象に患者や家族からの暴力・ハラスメント事例が調査されました。73件の事例のうち、その後の検討で警察に通報・相談すべきと判断されたものは7件でした。具体的には、「次に会ったとき刺してやる」「殺すぞ」などの発言、訪問中の刃物による脅し、携帯電話を取り上げられて長時間軟禁された事例、などでした。しかし、実際に警察へ通報されたのは1件のみでした。

訪問看護や訪問介護に関わる現場では、暴力やハラスメントに関するマニュアルが用意されています。そこには、暴力を受ける、身体に傷害を受ける、凶器を持って脅される、などの場合に警察へ通報するよう記載されています。しかし、身の危険を感じた際には、積極的に警察に相談すべきです。

積極的に警察と連携を

警察庁は2022年6月に「各都道府県医師会及び医療機関との連携の推進等について」、厚生労働省医政局は2023年1月に「各都道府県医師会及び医療機関並びに各都道府県警察との連携の推進等について」の通達を発出し、警察との連携を推進しています。

警察への相談が、さらなる暴力やハラスメントの抑止力になることもあります。したがって、地域で在宅医療に携わる医療従事者の安全が確保できるよう、警察との連携関係を構築することが必要です。そして、不当な要求や圧力に対しては毅然と対応することが重要です。


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