検索

×
絞り込み:
124
カテゴリー
診療科
コーナー
解説文、目次
著者名
シリーズ

コンゴ民主共和国・ウガンダでのエボラ出血熱のアウトブレイク[感染症今昔物語ー話題の感染症ピックアップー(48)]

登録日: 2026.06.25 最終更新日: 2026.06.25

石金正裕 (国立健康危機管理研究機構国立国際医療センター国際感染症センター/AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

お気に入りに登録する

●ブンディブギョウイルスによるエボラ出血熱とは1)2)

ブンディブギョウイルスは,フィロウイルス科オルソエボラウイルス属に分類されるウイルスで,エボラ出血熱を引き起こします。エボラウイルスは,ザイール,スーダン,ブンディブギョ,タイフォレスト,レストン,ボンバリの6種に分類され,このうちブンディブギョウイルスは2007〜2008年にウガンダで初めて大規模なアウトブレイクが確認されました。自然宿主はオオコウモリと考えられており,感染した野生動物や患者,または遺体の血液・体液,およびそれらに汚染された物品に直接接触することで感染します。

潜伏期間は一般に2~21日で,発熱,倦怠感,筋肉痛,頭痛,咽頭痛などで発症し,その後,嘔吐,下痢,発疹,肝腎機能障害,出血症状などをきたすことがあります。診断にはPCR検査や抗原・抗体検査が用いられます。致死率はおおむね30~50%とされ,重症化を防ぐためには早期診断と支持療法が重要です。

ザイールウイルスに対してはワクチンや抗体医薬が実用化されていますが,現時点でブンディブギョウイルスに対して有効性が確認された特異的ワクチンや治療薬はなく,感染予防・管理,患者隔離,接触者調査,安全な埋葬,地域住民とのリスクコミュニケーションが流行制御の中心となります。

●コンゴ民主共和国・ウガンダでエボラ出血熱のアウトブレイクが発生1)2)

2026年5月,コンゴ民主共和国東部のイトゥリ州を中心に,ブンディブギョウイルスによるエボラ出血熱のアウトブレイクが確認されました。5月5日に同地域で高い致死率を示す原因不明疾患が探知され,医療従事者の死亡を含む集団発生が報告されました。その後,イトゥリ州ルワンパラ保護区の検体からブンディブギョウイルスが検出され,同国で17回目のエボラ出血熱のアウトブレイクとして発生が宣言されました。さらに,隣国ウガンダの首都カンパラでも,コンゴ民主共和国からの輸入例が確認されました。以上を受けてWHOは,2026 年5月17日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態 (public health emergency of international concern:PHEIC)」に該当すると宣言しました。

流行は短期間で拡大しており,2026年5月29日時点で,コンゴ民主共和国では,確定例125例(うち死亡17例),疑い例906例(うち死亡223例)が報告されています。ウガンダでは確定例9例(うち1例が死亡)が報告されています。現時点ではウガンダ国内での持続的な感染伝播は明らかではありませんが,国境を越えた人の移動が活発であり,周辺国への拡大リスクが懸念されます。

今回の発生地域はイトゥリ州・北キブ州・南キブ州といった,紛争や治安上の課題を抱える地域であり,接触者調査や患者搬送,感染対策の実施には困難があります。日本との直接的な往来は限定的であり,現時点で日本国内への輸入例や国内伝播の可能性は低いと考えられます。しかし,発生地域への渡航歴や接触歴を確認することが重要です。今後も症例数,発生地域,周辺国への波及,公衆衛生対応の進捗を継続的に注視する必要があります。

【文献】

1) WHO:Ebola disease caused by Bundibugyo virus, Democratic Republic of the Congo & Uganda. (2026年6月4日アクセス)
2) 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト:コンゴ民主共和国およびウガンダにおけるエボラ出血熱の流行について. (2026年6月4日アクセス)

石金正裕 (国立国際医療研究センター病院国際感染症センター/ AMR臨床リファレンスセンター/WHO協力センター)

2007年佐賀大学医学部卒。感染症内科専門医・指導医・評議員。沖縄県立北部病院,聖路加国際病院,国立感染症研究所実地疫学専門家養成コース(FETP)などを経て,2016年より現職。医師・医学博士。著書に「まだ変えられる! くすりがきかない未来:知っておきたい薬剤耐性(AMR)のはなし」(南山堂)など。


1