GLP-1受容体作動薬が「減量薬」として注目されて久しい。しかし肥満例における心血管系(CV)イベント抑制作用を検討したランダム化比較試験(RCT)は少ない。肥満例のCVイベント抑制を目指す場合、優先すべき薬剤は何なのだろう。
そこで肥満例を対象にCVイベント抑制作用を検討したRCTをもとに、至適治療を探ろうとする試みが、6月5日から米国ニューオーリンズで開催された米国糖尿病学会(ADA)第86回学術集会で報告された。ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(米国)のShohinee Sarma氏によるRCTネットワーク・メタ解析である。この領域では初の試みだという。
【対象】
解析対象となったのは、肥満例を対象に「強化生活習慣改善」か「減量手術」、「薬剤治療」による「CVイベント抑制作用」を検討したRCT 67報である(試験参加例総数は20万5889例)。対象の平均年齢は64歳、BMI平均値は33kg/m2だった。
【方法】
これら67試験を用いて「間接比較」も可能な「ネットワーク・メタ解析」を実施し、治療法ごとの「重篤CVイベント」(MACE)、「心不全」、「死亡」の対プラセボ群抑制作用が比較された。比較の指標に用いられたのは「P値」である(「0~1」間の値を取り、大きいほうが他治療法よりも優れている可能性が高い)。
【結果】
まず「MACE」抑制作用を比較すると、P値が最も大きかったのは「メトホルミン」、ついで「チルゼパチド」、「SGLT2阻害薬(カナグリフロジン)」の順だった。対プラセボ群オッズ比(OR)は順に0.63、0.71、0.72である。
ただしメトホルミンとチルゼパチドはORの95%信頼区間(CI)が「1」を跨いでいるため、上記結果には「不確実」があるとSarma氏は注意を呼びかけている。CINeMAC(ネットワーク・メタ解析における結果信頼性の指標)を用いた評価でも、メトホルミンの上記結果は、他2剤に比べ信頼性に劣ると判定された。
「心不全」はどうか。こちらはP値の大きい順に「減量手術」、「SGLT2阻害薬(ソタグリフロジン)」、「チルゼパチド」の順番だった。ただし「減量手術」のOR 95%CIは「0.03-1.70」ときわめて広い。CINeMA評価も上記メトホルミン以上に低く、解釈には注意が必要なようだ(SGLT2阻害薬とチルゼパチドの95%CIは「1」を跨がず)。
「死亡」抑制では「ソタグリフロジン」と「エンパグリフロジン」の「SGLT2阻害薬」がワンツーフィニッシュを飾り、「メトホルミン」が続いた。ただしメトホルミンのORはここでも95%CIが「1」を跨いでおり、Sarma氏は結果には不確実性が残ると見ている。
【考察】
Sarma氏は上記の結果から、死亡と心不全を抑制するにはSGLT2阻害薬が最も確実と考察している。ただしそれに加え、肥満例の転帰改善にはCVリスクに応じた治療の選択が重要であり、「減量」だけに目を奪われないことが肝要だとも付記している。
なお本報告に関係した研究者に、開示すべき利益相反はないとのことである。