日々の感染症診療では,通常は病歴や身体診察で得られた臓器特異的な所見を手がかりに感染臓器を特定していく。肺炎であれば呼吸困難,咳嗽・喀痰の増加,低酸素血症などが,尿路感染症(特に腎盂腎炎)であれば,背部痛や肋骨脊柱角の叩打痛,尿中白血球陽性などが手がかりとなる。
一方で,CRBSIは臓器特異的な症状が基本的にはみられないため,身体診察のみで診断を確定することは困難である。カテーテル刺入部の発赤といった所見はなくはないが,その頻度はCVCによるCRBSIでは3%程度4),末梢静脈カテーテルによるCRBSIでも60%程度と5),刺入部の所見が伴わないことが多いため,刺入部に異常がないのでCRBSIらしくないとは言ってはいけないのである。CRBSIは臓器特異的な所見に乏しいが,あえて感染臓器を挙げるなら「血流」である。よって,CRBSIは血液培養検査によって「血流」という臓器の病変を診断する感染症と言える。
そして,カテーテルが挿入されている患者が発熱した際に,臓器が特定できないからと言って,すぐにCRBSIに飛びつかないことも重要である。臓器が特定しにくい感染症はいくつか挙げられるが(表2)1),カテーテルが挿入されている患者がCRBSI以外の感染症を起こすことはよくある。さらに,感染症に限らず,偽痛風や薬剤熱,侵襲的処置に伴う発熱など,非感染性の発熱をきたすこともある。

だからこそ,CRBSIを疑うときは除外診断が重要となる。頻度の高い感染症である肺炎,尿路感染症,胆道感染症,腸管感染症(入院中であれば主にClostridioides difficile感染症),皮膚・軟部組織感染症などの臨床所見がないかチェックし,さらに偽痛風や薬剤熱,静脈血栓症などの非感染症の有無も慎重にチェックする必要がある6)。
なお,患者の全身状態が安定しており,敗血症・敗血症性ショックの基準も満たさないのであれば,血管内カテーテルを直ちに抜去せずに,血液培養を採取して結果を待つという選択肢は許容される。
また,単に刺入部の末梢静脈炎で局所の炎症所見(熱感,発赤,腫脹,疼痛)がみられることがある。これはCRBSIではないので,基本的にはカテーテル抜去(ソースコントロール)のみで抗菌薬投与は不要である4)(図1)。ただし,原因不明の発熱や炎症反応の上昇が続く場合,あるいは局所から排膿がみられる場合などは,菌血症や化膿性血栓性静脈炎に進展している可能性があるため,直ちに血液培養を採取の上,抗菌薬治療を開始することが勧められる。

※この記事は,FOCUS「深掘り! カテーテル関連血流感染症(CRBSI)診療」の一部を抜粋・編集したものです。
